ROCK STANDARD  059 ROBERT WYATT
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています
ROCK BOTTOM (1974)


original jacket↓


  1. SEA SONG
  2. LAST STRAW
  3. LITTLE RED RIDING HOOD HIT THE ROAD
  4. ALIFIB
  5. ALIFIE
  6. LITTLE RED ROBIN HOOD HIT THE ROAD
  • ROBERT WYATT : VOCAL, KEYBOARDS, JAME'S DRUM�´���
  • RICHARD SINCLAIR : BASS�´���
  • HUGH HOPPER : BASS�↓き�
  • MIKE OLDFIELD : GUITAR��
  • MONGEZI FEZA : TRUMPET��
  • GARY WINDO : BASS CLARINET��, TENOR SAX��
  • FRED FRITH : VIOLA��
  • LAURIE ALLAN : DRUMS�↓�
 カンタベリー・ミュージックを代表するドラマーだったロバート・ワイアットが、シンガーとして再スタートした記念すべき作品です。彼は、第2期マッチング・モール(リーダー・バンド)の再開前日の夜に起こった4階の窓からの転落事故(階段という話もありますが、本人の手記にはこう書いてあります)により下半身不随になりドラマーとしての活動ができなくなってしまいました。それでも周囲の励ましや本人の意志の強さによって事故の前に構想を練っていた曲などを6ヶ月の入院中に完成させます。そうして発表された作品は、人生を左右する大きな事故からの再スタートにふさわしい希望に満ち溢れた大傑作なのです。

 これまでにご紹介したカンタベリー・ミュージック系のアーティストは、キャラヴァンの『In The Land of Grey and Pink』のみです。また、カンタベリー・ミュージックに近いということではビル・ブラッフォードの『Feels Good to Me』があります。どちらもジャンルとしてはジャズ・ロック系ということになりますが、難解な作品ではなく心癒される作品になっています。このジャンルでは、ロバート・ワイアットが結成メンバーとして4作目まで在籍したソフト・マシーンが有名ですが、どんどん技巧的になって難解さはアップするばかり。そのお陰で?カンタベリー・ミュージックは、とっつきにくいジャンルの筆頭に上り詰めているように感じます。しかし、本来はやさしさとテクニカルな要素が見事に合体した作品が多かったのです。

さて、本作品の聴き所は、何と言ってもR.ワイアットのヴォーカルやキーボードにパーカッションですが、旧知のカンタベリー一派の参加も見逃せない要素になっています。カンタベリー・ミュージックを代表するヒュー・ホッパー(ソフト・マシーン:2nd〜6th)とリチャード・シンクレア(キャラヴァン:1st〜4th)というベーシストが参加しているのです。カンタベリー・ミュージックの中心的な音色要素を担っていたキーボード(主にオルガン)とベース、その特色あるベーシストがそれぞれ3曲ずつ演奏していますので聴き比べてください。そしてもう一人、最後の作品には『チューブラー・ベルズ』で有名なマルチ・プレイヤーのマイク・オールドフィールドがギターで参加しています。この人、カンタベリー派というわけではないのですが、録音していたスタジオがカンタベリー派の人たちと同じだったりして知り合ってしまったようです。

アルバムは、いかにもR.ワイアットという美しい名曲で幕を開けます。ふわふわ感のあるワイアットの声と不安定な旋律が安定感をもたらすという摩訶不思議な作品ですが、上品でありながら内に秘めた力強さを感じさせてくれる作品でもあります。2曲目も海の中をイメージした作品で、ワイアットのスキャットも含めた素晴らしいヴォーカルとキーボードを中心に展開されます。ゴングからローリー・アランがドラムスで参加しており、ジャズ・ロックではありますがプログレッシヴ・ロック色が濃い感じがします。3曲目は、ワイアットがファンだったアサガイ(アフロ・ジャズ?)のトランペット奏者:モンゲジ・フェザが大活躍する作品です。作品を通して突き抜けるような透明感のあるトランペットが楽しめます。そのトランペットを従えたヴォーカルやうねりのあるキーボード群、地味ではありますが素晴らしい演奏のシンクレアのベースなどプロデューサーのN.メイソン(ピンク・フロイド)の手腕にも感激です。

 4曲目からがアナログではB面になります。4曲目と5曲目は対になった作品でカンタベリー・ミュージックの生みの親とでも言うべき奇才デヴィッド・アレン(ゴングのリーダー)が得意だったというポエトリー・リーディングを中心に展開されます。ヒュー・ホッパーのベースとワイアットのキーボードによる叙情的な4曲目、第2期マッチング・モールに参加予定だったギャリー・ウインドのサックスが加わって展開されるフリーキーなジャズ・ロックの5曲目、楽しめる構成に脱帽です。最後の作品は、何と言ってもM.オールドフィールドのギターに注目です。ロバート・フリップも真っ青の音色でテクニカルに弾きまくります。そのロック色の濃い前半部に続いては、ポエトリー・リーディングやヴィオラを中心としたトラディショナルな後半で静かに静かに幕を閉じます。余韻が堪らないのです。

 「私は、リーダーにもフォロアーにもなりきれない。」と語っていたワイアット、参加を要請したメンバーの力が最大限発揮できるような状況を作り出すのもうまいんでしょうね。

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