ROCK STANDARD  070 LOU REED
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています
BERLIN (1973)



  1. Berlin
  2. Lady Day
  3. Men of Good Fortune
  4. Caroline Says l
  5. How Do You Think It Feels
  6. Oh, Jim
  7. Caroline Says ll
  8. The Kids
  9. The Bed
  10. Sad Song
  • LOU REED : vocals, acoustic & electric guitar
  • MICHAEL BRECKER : tenor sax
  • RANDY BRECKER : trumpet
  • JACK BRUCE : bass; except �↓�
  • AYNSLEY DUNBAR : drums; except �↓�
  • BOB EZRIN : piano, mellotron
  • STEVE HUNTER : electric guitar
  • TONY LEVIN : bass on ��
  • Allan Macmillan : piano on ��
  • GENE MARTYNEC : acoustic guitar, synthesizer and vocal arrangement on ��, bass on ��
  • Jon Pierson : bass trombone
  • DICK WAGNER : background vocals & electric guitar
  • BLUE WEAVER : piano on ��
  • B.J. WILSON : drums on �↓�
  • STEVE WINWOOD : organ & harmonium
PRODUCER : BOB EZRIN
 『食わず嫌い』という意味と同じで『聴かず嫌い』という言葉があるとすれば、それに当てはまるアーティストがいました。とくに嫌いというわけではないのだけれども、なんとなく聴く気がしないという感じでしょうか。フランク・ザッパしかりイギー・ポップしかり。そして、今回ご紹介するルー・リードもそうでした。ザッパは、難解すぎてとっつきにくいという感じだったし、イギー・ポップは、『ミュージック・ライフ』に掲載される上半身裸で身体をくねらせた写真が好きではなかったというのが、その理由でしょうか。同じくバイセクシャル的なイメージだったデヴィッド・ボウイは、シングル・ヒットという強力な武器のおかげで明るい(?)感じでしたが、イギー・ポップの場合はアングラ的(死語でしょうか?)イメージが先行し聴くに至らなかったのです。小遣いに余裕がなかったというのもありますが。

 では、ルー・リードを聴くに至った理由はというと、デヴィッド・ボウイとプロデューサーのボブ・エズリンいうことになるのでしょうね。前作のショッキングなカミング・アウト作品だった『Transformer(1972)』は、デヴィッド・ボウイとミック・ロンソンによるプロデュース作品だったことで聴いてみようかなという気になったのも事実です。それに加えて、本作は、ボブ・エズリンがプロデュースを担当しています。アリス・クーパーの『Killer(1971)』、『School's Out(1972)』、『Billion Dollar Babies(1973)』でのプロデュースの素晴らしさは私の脳裏に強く焼きついていますし、そのドラマティックな構成は、今思えば多少大げさな帰来もありますが、ブロードウェイ的アプローチによりロックを芸術の域にまで押し上げたという功績は大きいと思います(ちょっと大げさかな)。

 さて、そろそろ本題へ。このアルバムは、「耳で聴く映画」というコンセプトで製作されファースト・ソロ・作品に収められていた「ベルリン」をアルバム・タイトルであり作品コンセプトの象徴にしています。1989年のベルリンの壁崩壊前の東西ドイツの分裂を象徴する都市であるベルリン、「男と女」「富と貧困」など二面性が表現されています。すべてが関連しているわけではありませんが、ベルリンでのアメリカ人のジムとドイツ人で娼婦のキャロラインを中心に物語は展開していきます。

 アルバムは、アラン・マクミランの素晴らしいジャズ・ピアノをバックにルー・リードが語るように歌う曲で始まります。冒頭に入っているパブの雑踏での「Happy Birthday」の歌の意味はわかりません。この作品では、ファースト・ソロ作品に収められていた曲の前半部が使用されています。2曲目は、リズム隊にストリングスやオルガンも加わったドラマティックで重厚な作品です。アレンジがとても素晴らしいのです。ちなみに、タイトルの「レディ・デイ」とは、ビリー・ホリデイのニックネームです。華やかな舞台とは裏腹に乱れ苦しんだ私生活の対比がモチーフになったのでしょうか。3曲目も「富と貧困」という対比です。ミディアム・テンポのメリハリのあるハードなバラード調の作品です。ベース・ラインの強調により湿り気のあるどっしりした作品に仕上がっています。4曲目は、「男と女」を「S&M」により描いた作品です。当時のロックの中心だったグラム・ロック調の作品ですが、ストリングスとコーラスのセンスある導入で華やかで広がりのある作品に仕上がっています。5曲目はへヴィな始まりですが、途中からブラスが加わりハードなブラス・ロック風の作品へと展開します。小気味の良いリード・ギターもフィーチャーされご機嫌な一曲です。6曲目もブラス隊を従えての作品です。ジムとキャロラインの関係が語られていますが、5曲目のドラッグとバイセクシャル的な表現ともつながっているように思えます。

ここからがアナログではB面になります。7曲目は、まるで子守唄のような優しさに溢れた作品です。メロディにかぶさる柔らかなストリングスが心を癒してくれるのです。8曲目は、優しく諭すようなヴォーカルが素敵な作品。ギターが印象的に使用されていますが、もっと印象的なのは最後の母親を呼ぶ子供の泣き声。キャロラインは育てる能力がないということで子供と引き離されます。そして9曲目は、夜の帳に吸い込まれていくような美しい作品ですが、子供と引き離され自殺を図るキャロラインが描かれています。全編にわたるアコギも印象的ですが、キーボードなどが効果音的に使用され静寂の世界が映し出されています。10曲目は、クラシカルな要素を取り入れた心が清められるような後味さわやかな作品です。「耳で聴く映画」を締めくくるにふさわしい大作に仕上がっています。

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