WEEKLY PICKUP 059 PAICE,ASHTON,LORD
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
MALICE IN WONDERLAND(1976)


  1. Ghost Story
  2. Remember the Good Times
  3. Arabella
  4. Silas and Jerome
  5. Dance With Me Baby
  6. On the Road Again, Again
  7. Sneaky Private Lee
  8. I'm Gonna Stop Drinking Again
  9. Malice in Wonderland
  • BERNIE MARSDEN : GUITARS
  • PAUL MARTINEZ : BASS
  • JOHN LOAD : KEYBOARDS
  • TONY ASHTON : VOCAL, KEYBOARDS
  • IAN PAICE : DRUMS
ファンキーでソウルフルな『カム・テイスト・ザ・バンド』発表後に解散した第4期ディープ・パープル。その解散の要因として挙げられるのが、アメリカ人であるトミー・ボーリンのドラッグ禍に加え彼が持ち込んだファンクにあったことは確かでしょう。そのサウンドに旧来のファンのかなりの人たちが違和感を唱え、リッチー・ブラックモア率いるレインボーにパープルの幻影を求めました。

しかし、パープルのサウンドの変化は『嵐の使者』においても顕著に聴き取れ、それが原因でリッチーがパープルを去ったことも確かです。偉大なグループの解散という衝撃的な出来事をトミー・ボーリン一人の責任にすることでファンは納得しようとしたのかもしれません。

ただ、解散後に発表された各メンバーの作品を聴けば『カム・・・』が全員の求める音楽的な方向性だったことは十分に納得できます。

DAVID COVERDALE / WHITESNAKE (1977)
GLENN HUGHES / PLAY ME OUT (1977)
TOMMY BOLIN / PRIVATE EYES (1976)

デヴィッドの作品は、タイトルこそその後に結成するバンド名を冠してはいますが、ハード・ロックと呼べる作品ではなく非常にソウルフルなヴォーカル作品です。グレンについても同様ですし、トミーの作品はハードからファンクなどバラエティに富んだ作品になっています。

そしてデヴィッド、グレンとトミーの中間に位置する作品が、大御所のジョン・ロードとイアン・ペイスが発表したこの作品なのです。キーボーディストでもあり素晴らしいヴォーカリストでもある旧知のトニー・アシュトンにオーディションで選ばれた(G)(B)の二人を加えたツイン・キーボードのグループの唯一のスタジオ作品(発掘ライヴがあります)です。中間という表現が適切かどうかは疑わしいのですが、ソウル、ファンク、R&Bなどバラエティに富んだ作品であるのは確かです。ただ老獪な?三人が絡んでいるだけに陳腐なはずはありません。パープル流のハードなリフや小気味の良いアレンジなど聴き所は満載です。

アルバムはヘヴィなキーボードとギターのリフで始まります。ラップ調のアシュトンのヴォーカルも新鮮でしたが、間奏に入る切れのよいホーンセクションを加えたジャジーでファンキーな展開がたまりません。2曲目はディスコティックなリズムを強調した作品。キャッチーなメロディと適度なハードさが絶妙です。ホーンセクションと女性コーラスが効果的に使われています。大袈裟ですが、アメリカンとブリティッシュの融合です。3曲目は、フォリナー的(まだデビューしていませんが)なピアノとカッティングによる軽めのギター・リフ、R&Bをベースに極上のヴォーカルが絡まるバラードです。ジェームズ・ブラウンばりのファンキーな4曲目。軽快なブギー・ロックの5曲目。ハードなドラムとベースに絡むホーンセクションがかっこいいのです。

6曲目は、このアルバムの中で一番ハード・ロック的な展開がされる作品。スティービ・ワンダー風のシンセサイザーが良いアクセントになってます。イアン・ペイスのドラムがフィーチャーされた7曲目は、落ち着きのある雰囲気が気に入っています。ゴスペル風の8曲目。清々しささえ感じる作品です。最後は、ノリノリの作品。タイトな演奏をバックに再びJ.ブラウン(?)の登場です。

ハードなリズム隊と好サポートのギター、変幻自在のキーボードにヴォーカル。高品質のバンド・アンサンブルが楽しめるアルバムです。とくに、イアン・ペイスはすべての作品で最高のパフォーマンスを見せてくれています。

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