WEEKLY PICKUP 048 HUMMINGBIRD |
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています |
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兎に角、素晴らしい作品です。タイトなドラミングなどがお好きな方にはお薦めです。
第二期ジェフ・ベック・グループ
の三人(ボブ・テンチ、マックス・ミドルトン、クライヴ・チャーマン)にスティヴン・スティルスやジョー・コッカーなど多くのアーティストの作品にセッション・ドラマーとして参加しているコンラッド・イシドール、元ジョディ・グラインドのギタリスト・バーニー・ホランドが加わって結成されたグループです。全員素晴らしいテクニックの持ち主ですが、それぞれが得意のスタイルを持っていることをお互いが打ち消しあうことなく融合させ素晴らしいバンド・アンサンブルを聴かせてくれます。 不思議なことに、後で参加したコンラッドとホランドの活躍が異常に目立つのです。コンラッドにいたっては、ドラマーであるにもかかわらず収録作品のうち5曲を単独で作曲しているという活躍ぶりですし、ミキシングのせいかどうかは分かりませんが全曲でドラムの音が前面に出てきています。ホランドのロック的なアプローチのギターも随所で適材適所の活躍を聴かせてくれます。といっても、JBG組の三人のセンスに陰りが見えているわけではありません。クライヴ・チャーマンなどのベースは控えめな音ながら曲によってそのスタイルを変化させ技術の高さを見せてくれています。ボブ・テンチもソウルフルなヴォーカルばかりではなくセカンド・ギタリストとして切れのあるギターを聴かせてくれていますし、マックス・ミドルトンもジャジーでスペイシーな素晴らしいセンスで作品を彩っています。 作品は、第二期ジェフ・ベック・グループ同様にソウルフルでファンキーな仕上がりになっていて、聴いているうちに自然に身体が動いてしまうという曲ばかりです。そのソウル、ファンク、ジャズ、ロックが渾然一体となった名曲でアルバムはスタートします。ヴォーカルがソウルフルに熱唱すればベースはファンキーにバック・アップ、それを落ち着かせるようにジャジーなエレクトリック・ピアノが入ってきたかと思えば、熱いロックテイスト溢れるギターがさらに盛り上げる、それらをきっちりサポートするようにリズムを刻むタイトなドラム、素晴らしいバンド・アンサンブルです。そして極めつけは、数多くのセッションでの経験がもたらすポップなセンス。これが加味されることにより作品の完成度は増していくのです。2曲目は、ルーズなギターが印象的なハードなファンク・ナンバー、3曲目もファンキーなナンバーですがこちらはミディアム・テンポの味わい深いヴォーカルをフィーチャーした作品です。4曲目は、スピーディーな演奏が楽しめる緊張感のあるインスト作品です。当時の言葉でいうところのクロスオーバーというよりも、その後使われるフュージョン(融合)のほうがピッタリくる作品です。切れ目なく始まる5曲目は、4曲目とは180度違ってスローなインスト中心の作品です。収録曲の中で唯一自作ではない作品ですが、力強いヴォーカル(短いですが)とブルージーなギターが印象的、大好きな作品です。 アナログではB面になる6曲目は、ファンキーですがロック色の濃いハードな作品です。シンセサイザーの使用やエコーの強いギターの音がスペイシーな余韻を残す曲です。7曲目は、明るくトロピカルなレゲエ調の作品でカラッとした仕上がりです。次の8曲目も7曲目よりもレゲエ色の強い作品ですが、こちらは叙情的な歌メロと間奏で入るスパニッシュ調の哀愁漂うギター・ソロが印象的な作品です。最後の作品は、ハミングバードのすべてが注ぎ込まれた集大成的な曲です。ゴフリー・マクリーンのコンガの参加や浮遊感漂うシンセサイザーの使用でサンタナの『キャラバンサライ』的な宇宙感を持った壮大な雰囲気があります。それをバックに繰り広げられる演奏は、おとなしめではありますが叙情性をアップさせるのに一役も二役も買っていると思います。ここらあたりの力技だけではないところが、このグループのセンスの良さですね。曲の最後は徐々にテンポが上がっていき素晴らしいギター・ソロが始まるのですが、余韻を残すフェード・アウトに物足りなさを感じながらアルバムは終了します。というわけで、もう一度最初から、となるのです。 |