DISCOGRAPHY  001 JEFF BECK
DISCOGRAPHYは、70年代を中心にしたロック・アーティストを紹介しています
BIOGRAPHY
私が、最初にジェフのレコードと出会ったのは「ハイ・ホー・シルバー・ライニング」というEP盤(シングル)でした。B面が「ベックズ・ボレロ」、どう考えてもA面とB面は逆じゃないのかなぁ、というのが今でも心に残っています。

1944年6月24日、ロンドン郊外のサリー州ウェリントンに生まれ。64年にプロとしての本格的な活動をはじめ、ジミー・ペイジ、ニッキー・ホプキンスと知合う。66年、ヤードバーズに加入。加入時のいきさつは有名ですが、若い人のために書いておきます。最初はセッション・ギタリストとして売り出し中のジミー・ペイジに声がかかりますが、ジミーはジェフを推薦してこの依頼を断ります。その数ヶ月後にジミーもヤードバーズへ、ジェフは11月のアメリカ公演を最後にソロへ転向。そして、冒頭のソロ作品の発表ですが、このときのプロデューサーの持ち歌が「ハイ・ホー・シルバー・ライニング」だったのです。そりゃ、ジミーと作った名曲「ベックズ・ボレロ」がB面でもしょうがないなぁ。その後、2枚のシングルを発表し順風満帆の船出をしますが、気持はグループ結成へと動いていきます。

ロッド・スチュワート、ロン・ウッドなどを誘い第一期ジェフ・ベック・グループを結成、『TRUTH』、『BECK O'LA』とブルースを基盤にしたハード・ロックへの過渡期的名盤を発表します。その後は、順調に行かず(ジェフ・ベックの悪い癖なのでしょうか?)アメリカで行ったセッションをきっかけに新メンバーとのグループ結成に向かいます。このときのセッション相手がヴァニラ・ファッジのティム・ボガートとカーマイン・アピスだったのです。しかし、ジェフは69年11月の交通事故により3ヶ月間もの入院を余儀なくされます。そのためかどうかはわかりませんが、ティム・ボガートとカーマイン・アピスはCACTUSを結成、名盤を残します。70年に退院したジェフも新グループ結成へと意欲を燃やし、コージー・パウエル、マックス・ミドルトン、クライヴ・チャーマン、ボブ・テンチらと第2期ジェフ・ベック・グループを結成、ファンキーでクロスオーバーのはしりとでも言うような大傑作アルバム2枚を残します。

しかし、ここでも悪癖が出たのかグループを解散し、新しいギターの探求のためか念願のティム・ボガート、カーマイン・アピスとともにベック、ボガート&アピスを結成します。今度は、原点回帰とばかりに図太いロックを展開、ハードなアルバム『BECK BOGART & APPIS』を発表します。日本への来日も果たし、日本におけるジェフ人気は最高潮を迎えます。しかし、ここでまたBB&Aをあっけなく解散させ、ギター追求の旅に。この頃は、アルバム2枚でグループを解散させるジェフ・ベックというのが定説になってました。

そして発表されたのが、ロック界を震撼させた『BLOW BY BLOW』なのです。ギター表現の極地とまで言われたこのアルバムこそ、2004年の今になっても色あせることのない超歴史的名盤なのです。しかし、これで終わることなくギター表現の飽くなき探求は続きマハビシュヌ・オーケストラで有名になっていたキーボード奏者ヤン・ハマーをパートナーにとんでもない名盤を発表するのです。それが、『WIRED』なのです。ただ、スタンリー・クラークなどとのセッションなどを経て80年に発表された『THERE & BACK』後は、テクノっぽい作品も増えたりで、凄さはあるのですが私自身としてはあまり好きにはなれない作品が続いています。
TRUTH(1968) BECK O'LA(1969) ROUGH AND READY(1971) JEFF BECK GROUP(1972)


68年発表の第一期ジェフ・ベック・グループのデビューアルバムは、ヤードバーズの名曲「Shapes of Things」で幕を開けます。全曲にわたってベックのギターが炸裂していますが、それに負けないロック・ヴォーカリストとしてのロッド・スチュアートのボーカルはさすがです。とくに、このアルバムを代表する名曲「Rock My Plimsoul」での熱唱は、ベックのギターに完全に勝っています。スチュアートの声じゃないと聴きたくないとまで思えます。そして先見性が光るジミー・ペイジ作曲の「Beck's Bolero」は、後の『Blow By Blow』にも通じるほど完成度の高い曲になっています。全体として、音自体の古さは感じますが、パワフルなロックという点では現在のロックなどよりも上だと思います。


前作ではゲストとして参加していたセッションプレーヤーの天才ピアニストであるニッキー・ホプキンスを正式メンバーに加えて発表された第二作。前作とは違って、全体のバランスがよくベックのギターだけが前面にガンガン出てくるということはありません。どちらかというと「Jailhouse Rock」にみられるように壺を押さえたホプキンスの魅力が発揮されているといえる作品です。もちろんスチューアートも活躍しています。ブルースというよりはスピーディーでのりの良いロックンロール的なアプローチが目立つアルバムに仕上がっています。


ロック界に大きな衝撃を与えた第二期J.B.G.のファースト。強烈な16ビートをたたき出すコージー・パウエル(dr)とクライヴ・チャーマン(b)とジャズ色の強いマックス・ミドルトン(p)にリズム&ブルース色の濃いボブ・テンチのヴォーカルから生まれる曲は、まさしくフュージョン。ロック界にフュージョン旋風を巻き起こしたこのアルバムに勝るものはないといっても過言ではありません。あるとすれば、ジェフ・ベックのアルバムしかないでしょう。すべてが新鮮で、今になっても少しも古臭さを感じない上質の作品たちです。リラックスしたムードの中にも適度な緊張感があり、力ではなくうまさで聴かせてくれる名盤です。
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Rock Standard 010


前作よりもフュージョン、ジャズ色が強まった第二作。パワフルな点では前作には及びませんが、複雑なリズムの組み立てやメローで美しい曲など、タイトでコンパクトにまとめられたアルバムの完成度はこちらのほうが高く、その後のジェフ・ベックの活動の根底が随所に見え隠れする作品です。特にギターの響きや曲構成には『Blow By Blow』に通じるものがあります。このアルバムを最後にバンドは解散しますが、コージーを除いたメンバーはハミングバードを結成し3枚のアルバム(必聴です)を残します。
BECK BOGERT & APPICE(1973) BECK BOGERT & APPICE LIVE IN JAPAN(1973) BLOW BY BLOW(1975) WIRED(1976)


ジェフの交通事故やレコード会社の問題などで頓挫していた念願のグループ唯一のスタジオ録音盤。本来ならスチュアートを加えた4人組になるはずだったが、フェイセズやソロとして活躍していたスチュアートは参加せずシンプルに3人組としてスタート。元ヴァニラファッジ、カクタスのティム・ボガート(b)、カーマイン・アピス(dr)というパワフルなバックを得て、時には力強く、時にはやさしくメロディアスな一面を見せたりと飽きのこない作品になっています。けして上手とはいえませんが、それなりにマッチしているヴォーカルやコーラス、メロトロンの導入など新しいジェフの魅力がたっぷりと味わえます。


困難の末にジェフの了解を得て、日本のみで発売されたライヴアルバムです。大阪公演の2日間の録音からなのですが、録音方法が悪いのか臨場感があまり感じられません。それでも、ライヴらしく曲の中にヤードバーズ、第一期JBGの曲のフレーズを挿入したりしていて楽しめるのは確かです。CDになって少しは効き易くなりました。デジタルは凄いなって感心した覚えがあります。


ヴォーカルとのコラボレーションに悩みつづけたジェフの最高の答えが、この驚異のギター・インストゥルメンタル・アルバムだったのでしょう。気心の知れたマックス・ミドルトン(p)、フリップ・チェン(b)、当時は弱冠18歳だったリチャード・ベイリーとともに製作された作品は、リターン・トゥ・フォーエヴァーなどに代表されるようにエレクトロニクスを大胆に導入し始めたジャズの影響を強く受けており、ジェフのギターもシンプルかつファンキーで小細工のないストレートな音を聞かせてくれています。聴いてすぐ、次の作品が待ち遠しくなった記憶を今でも思い出します。


前作と同じインストゥルメンタル・アルバムでありながらヤン・ハマーというシンセサイザーの申し子的な人間の参加により、ギターとシンセサイザーの壮絶なバトルとなった作品。良い意味で聴き手を裏切った名盤でしょう。思っていた以上にシャープで激しいジェフのギターを聴く事ができるなんて最高です。もちろん泣かせ所も心得ておりメリハリのあるアルバムになっています。当時のロック、ジャズ、ファンク界の交流の縮図がこのアルバムにはあります。ジャズ界からのアプローチとして発表されたスタンリー・クラークの第二作『Journey to Love』の中でジェフが参加した「Hellow Jeff」も同系の曲です。
JEFF BECK WITH JAN HAMMER GROUP(1977) THERE AND BACK(1980) FLASH(1985) GUITAR SHOP(1989)


1976年のヤン・ハマーのツアーに同行したときのライヴの模様を伝えているので、実際にはジェフ・ベックのリーダー・アルバムではありません。ジェフ・ベックのギターも凄いんですが、当然バンドのリーダーであるヤン・ハマーのほうが凄いんです。


かなりのブランクをおいて発表された作品ですが、作品的には『WIRED』の延長線にあるアルバム。しかし、激しいインプロヴィゼーションの応酬などはなく非常に落ち着き感のある曲が多く、印象としてはおとなしい感じです。目新しさがないのが難点といえば難点でしょうが、悟りの境地に入った感じのするジェフのプレーは、やはり圧巻です。


5年のブランクを空けて発表されたアルバムで、歌物にも再度挑戦しています。しかし、散漫な印象を持ってしまうのは私だけでしょうか?ロッド・スチゥワートとの「ピープル・ゲット・レディー」は最高です。


トニー・ハイマス、テリー・ボジオという強力なリズム隊とのコラボレーション・アルバム。前作の不評をあざ笑うかのように全曲インスツルメンタルで、パワフルなジェフが戻ってきました。