ROCK STANDARD 056 STEELY DAN |
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています |
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なんとエキサイティングでエロチックなジャケットでしょうか!当時の私には十分過ぎるくらいに刺激的でした。当時は、アメリカといえばウエストコーストのさわやかさかサザン・ロックの泥臭さと相場が決まっていたのに、突如として登場したジャズ・テイストに溢れた異端児的な存在のバンドで、イーストコースト出身でウエストコーストよりデビューした(詳しくはDISCOGRAPHY 005へ)スティーリー・ダンのファーストのご紹介です。 私が初めてこのバンドのシングル・レコードを手にしたのは、ファースト・シングルで全米6位を記録した「Do it's again」ではなくてセカンド・シングルの「輝く季節:Reelin' in the Years」でした。その爽やかさと特徴的なギター・ソロが気に入っての購入でした。ただ、ジャケットがいまひとつ、ふたつという感じだったのですが、友人の中でこのシングルを買う人間がいそうもなかったというのも理由のひとつでした。しかし、シングルだけでは物足らず少ない軍資金を使い果たしアルバムの購入へと突き進みました。 ONE&ONLYであるが故に初めて聴いたときは違和感があったヒット曲からアルバムは始まります。ラテン調のリズムを正確に淡々と刻んでいくドラムにパーカッション、冷ややかとも思えるD.フェイゲンのヴォーカルにキーボード、それらに妖しげに絡むエレクトリック・シタールの響きや屈折した歌詞などすべてが合わさったときスティーリー・ダンの魅力が開花するのです。2曲目は、1曲目とは違い牧歌的な雰囲気を持った作品です。それは、デヴィド・パーマーの歌声と美しいコーラスによるところは大ですが、まだまだバンドがポップ性を捨ててはいなかったというところでしょうか。J.リチャードソンのサックスが良い味付けになっています。3曲目は、名作『幻想の摩天楼』に通じる作品。ヴォーカルは当然D.フェイゲン、間奏のS.ハウ風の盛り上がりがあるギター・プレイには感動です。セッション・マンとして参加のE.ランドールのソロが聴ける4曲目は、ナイーブで美しいメロディが印象的な作品。この時期のスティーリー・ダンはギターを中心にしたバンドであったことを如実に物語る作品でもあります。ボサノバ調の5曲目は、やさしく心地よい風を肌に感じているような作品です。ジェフ・バクスターのクロスオーヴァー的なギターが最高です。 アナログではB面の最初である6曲目は、川の流れのような展開と爽やかな風のようなコーラスも印象的ですが、なんと言ってもE.ランドールのギター・ソロに注目です。ここでのソロは、彼の数あるセッションの中でナンバーワンといえる出来です。ジェフのペダル・スティール・ギターが耳に残る7曲目は、ジャズを取り込んだ彼らだけの世界です。続く8曲目もジェフのギターが印象に残りますが、D.フェイゲンとD.パーマーのヴォーカルの使い分けと絶妙のリズムとメロディにより田舎と都会が混在する不思議な世界です。このアルバムではかなりポップな作品の9曲目に続いての最終曲は、ソウル、ジャズ、ロックが一体になったスティーリー・ダン的手法による汎アメリカン・ポップスといえる作品です。意識していたかどうかは別として、見事としか言いようのないクロスオーバーの作品です。 強力な個性であるがゆえに追随または模倣するバンドがいたかというとそうではないのですが、ウエストコーストやサザン・ロックの台頭してきた時期にアメリカのロックは、だけじゃないんだよと一石を投じた意義は高く評価されるべきだと考えています。ポップな感覚溢れるギター・バンドとしての初期の2枚、スティーリ・ダンとしての表現が確立していく家庭が面白い『プレッツェル・ロジック』、『うそつきケイティ』、『幻想の摩天楼』の3枚、フェイゲン&ベッカーのコンビの集大成である『彩』と『ガウチョ』、それぞれが70年代において光を放った作品です。 |