WEEKLY PICKUP  078 NICOLETTE LARSON
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
NICOLETTE (1978)


  1. Lotta Love
  2. Rhumba Girl
  3. You Send Me
  4. Can't Get Away From You
  5. Mexican Divorce
  6. Baby Don't You Do It
  7. Give A Little
  8. Angels Rejoiced
  9. French Waltz
  10. Come Early Mornin'
  11. Last In Love
  • Nicolette Larson : vocals, background vocals, guitar, percussion
  • Rick Shlosser : drums
  • Bobby LaKind : percussion, conga, triangle
  • James Burton : Guitar, Dobro
  • Victor Feldman : vibes, percussion
  • Herb Pedersen : guitar, background vocals
  • keyboards : Bill Payne, Mark T. Jordan
  • Albert Lee : guitar, mandolin
  • Ted Templeman : percussion, background vocals
  • Bass : Klaus Voormann, Bob Glaub
  • Sid Sharp : synthesizer, concert master
  • Horn : Chuck Findley, Jim Horn, Steve Madaio, Plas Johnson : Flute, Andrew Love : Saxophone
  • Guitar : Paul Barrere, Patrick Simmons, Eddie Van Halen��, Fred Tackett, David Kalish
  • background vocals : Valerie Carter, Michael McDonald, Linda Ronstadt
  • Jimmie Haskell : strings, accordion, conductor, string arrangements, woodwind arrangement


Produced by Ted Templeman
 ニコレット・ラーソンを一言で表現すれば、10人中10人が『天真爛漫』という表現をするのではないでしょうか。そのさわやかな歌声とともにウエストコーストの天使としてデビューした彼女のファースト・アルバムです。アメリカでのタイトルは、単に『NICOLETT』ですが、邦題は『いとしのニコレット』と彼女のイメージをストレートに表現しています。それに加えて、このジャケットが天真爛漫さを感じさせるのに十分すぎるんです。アメリカのカントリー・スタイルとでも言うのでしょうか、シックでかわいらしいワンピースが彼女にマッチしてます。

 大学をドロップアウトしカリフォルニアにやってきた彼女は、エミルー・ハリスなどカントリーを中心とした人脈の中でバック・コーラスを担当し頭角を現していきます。ついには、リンダ・ロンシュタットと同居するまでになり歌に磨きをかけていき周囲も含めた人間からデビューを促されるのです。写真のかわいらしさからは想像できませんが、当時彼女はすでに25歳。生来の天真爛漫さが彼女を十代にも見せてしまうのでしょうね。ローラースケートを履き三つ網にしたお下げでテッド・テンプルマンと写っている内ジャケの写真はまさに天使のようです。

 1978年9月に発売されたこのデビュー作は、ウエストコーストの豪華なバック陣に彩られたすばらしい作品です。プロデューサーのテッド・テンプルマンの力の入れようが参加ミュージシャンを見てもお分かりいただけると思います。もちろん、ヒットした理由は、バック陣に負けない彼女の魅力が一番ですけどね。白人と黒人の声を併せ持つ彼女の声は、ソウルやR&Bからポップス、ロック、カントリーに至る幅広いジャンルに対応することができるのです。微妙な歌い回しの違いが、アルバムの中の一曲一曲を際立たせていると思います。

 まずは、リトル・フィートの二人。リトル・フィートは、商業的な成功を収めることはできませんでしたが、ミュージシャン仲間の評価は非常に高いという不幸な(?)バンドですが、そのバンドから音楽ディレクターも務めるキーボーディストのビル・ペイン、ギタリストのポール・バレールが参加してセンスの良さを披露しています。さらに、テッド・テンプルマンのプロデュースにより一世を風靡してアメリカを代表するバンドになったドゥービー・ブラザーズからパーカッショニストのボビー・ラカインドが小気味の良い演奏で作品にキレを与えていますし、パトリック・シモンズとマイケル・マクドナルドが1曲ずつですが参加しています。

 また、私的には重要だと思っているのが、ドゥービーズやロギンス&メッシーナなどにも参加しているヴィクター・フェルドマンなのです。彼は、ウエストコースト系の名だたるミュージシャンの作品に多数参加していますが、もっとも重要なキープレイヤーとして参加しているのがスティーリー・ダンなのです。ピアニストでありヴァイブ奏者でもありパーカッショニストでもある彼は、ジャズ畑を経てフランク・ザッパの作品でロックに開眼(?)したという経歴の持ち主ですが、この作品でもR&Bからポップス、カントリーなど多彩な作品群でセンスの良さが光る演奏をしています。

 前置きが長くなってしまいました。アルバムの冒頭を飾る曲は、当時恋仲だったといわれるニール・ヤングの作品です。ニール・ヤングの車の中で見つけたデモテープが気に入ったという逸話も残されています。全米ポップス部門で8位(AOR部門1位)を獲得した作品ですが、この作品の後に発表された地味な印象のニール・ヤングの作品(『Comes A Time』に収録)に比べると、豪華なストリングスとジャジーなサックスが印象的な彼女の作品は、ソウルフルで艶っぽいAOR風の仕上がりになっています。歌詞自体も短くサビの繰り返しが多いので、本当にデモテープだったのでしょう。2曲目は、ジェシ・ウィンチェスターの「Rhumba Man」を改題した作品。都会的なビルのキーボード、小気味良いポールのギターにラカインドのコンガ、ちょっぴりコブシを利かせたニコレットの歌など軽快で洗練された都会的な魅力が伝わる作品です。ヴィクターのマラカスもいかしてます。3曲目は、R&Bの黒人シンガー・ソングライターのサム・クックが1957年に発表した作品のカヴァーです。彼女のバージョンは、カントリー・バラード的な味付けがなされており大人の魅力があふれた作品に仕上がっています。4曲目は、ドゥービーズのトム・ジョンストンの作品を思わせる仕上がりのロック・ナンバーです。サイド・ギターのポール・バレールの演奏がトム・ジョンストンのカッティング奏法に似ているためでしょうが、リード・ギターも加わったストレートでご機嫌な作品です。ちなみに、リード・ギターは当時売出し中のエディ・ヴァン・ヘイレンが匿名で参加しています。カントリータッチの5曲目は、ニコレットの伸びのある美しい歌声が楽しめる美しい作品です。リンダ・ロンシュタットも素晴らしいハーモニーを披露しています。

 6曲目からがB面になります。トップを飾るのは、ドゥービーとリトル・フィートが合体したようなグルーブ感たっぷりのロック・ナンバーです。ソウルフルなニコレットの歌声も最高です。7曲目は、ビル・ペインがニコレットに提供した作品です。AOR風の美しい作品で、聴いているうちに部屋中が優しさに満ち溢れてきます。8曲目は、ハーブ・ペダーセンとニコレットのギター弾き語りにアルバート・リーのマンドリンが加わったカントリー・ナンバー。もと歌は、ルーヴィン・ブラザーズ(50年代から60年代に活躍)の作品ですが、ニコレットの友であり師匠的な存在のエミルー・ハリスのヒット曲として有名です。9曲目もカントリータッチの作品で、優しく伸びのある歌声が素敵な作品です。10曲目は、ハーブ・ペダーセンのアコギに加えジェームズ・バートンのドブロがリードする作品です。その二人に加えニコレットのギター、ベース、ドラムというカントリー・スタイルは、シンプルながら力強さを感じます。リンダ・ロンシュタットがバック・コーラスで参加しています。最後の11曲目は、J.D.サウザーとグレン・フライの共作でウエストコーストらしいメロディの作品です。。ストリングスとピアノのみのシンプルな構成ではありますが、ニコレットの声が加わると他には何もいらないことがよくわかります。スローテンポで進んでいくラヴ・ソングは、心に沁みるに充分の仕上がりになっています。

 80年代からは、カントリー歌手や役者として活躍していましたが、1990年に子供が生まれると子育てのため活動を休止します。しかし、1997年45歳という若さで脳浮腫のため亡くなってしまいました。ぜひ、彼女の天真爛漫で爽やかな歌声を聴いてみてください。

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