WEEKLY PICKUP  072 PHOEBE SNOW
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
PHOEBE SNOW (1974)


  1. Good Times
  2. Harpo's Blues
  3. Poetry Man
  4. Either or Both
  5. San Francisco Bay Blues
  6. I Don't Want the Night to End
  7. Take Your Children Home
  8. It Must be Sunday
  9. No Show Tonight
  • PHOEBE SNOW : LEAD ACOUSTIC GUITAR, LEAD VOCAL
  • STEVE BURTH : ELECTRIC GUITAR�´Ν�
  • HUGH McDNALD : ELECTRIC BASS�´Ν�
  • STEVE MOSLEY : DRUMS�´↓Ν�, PERCUSSION��
  • CHUCK DELMONICO : ACOUSTIC BASS�↓��Л�
  • TEDDY WILSON : PIANO��
  • RALPH MacDONALD : PERCUSSION
  • ZOOT SIMS : TENOR SAX��
  • MARGARET ROSS : HARP�↓���
  • BOB JAMES : ORGAN�↓��ΝЛ�
  • DAVID BROMBERG : ACOUSTIC GUITAR, DOBRO��
  • CHUCK ISRAELS : ACOUSTIC BASS��
  • DAVE MASON : LEAD GUITAR��
PRODUCER
THE EAGLES, BILL SZYMCZYK
 今回ご紹介するアルバムは、ロックではありません。非常に都会的なセンスに溢れた女性ヴォーカリストでありアコースティック・ギタリストであるフィービー・スノウの作品です。ビルボードのブラック、ジャズ、ポップそれぞれのアルバム部門で22位、17位、4位にランキングされた作品だということからも、その音楽性は想像していただけるでしょう。しかし、ご紹介する理由の一番は彼女の声なのです。もちろんギタリストとしても良い雰囲気を持っていますが、他に類を見ない声(ビブラートを効かせた柔らかなヴォーカル・スタイル)が彼女の最大の武器であり聴くに値するのです。力強いわけでもなく艶っぽいわけでもないパステルカラーのような《ほんわか》とした声を一度聴いてみてください。

 現在も活躍中で数多くの作品を発表している彼女には失礼かもしれませんが、なんといってもこのデビュー作品が一押しです。シンガー・ソング・ライターが流行っていた時代に突然現れた妖精(デビュー当時のキャッチフレーズが「ブルースの妖精」)をラジオで聴いていた時は、てっきり黒人だとばっかり思っていました。ブルースを根底にジャジーにフォーキーにと素晴らしいヴォーカルを披露してくれるのでそう思ったのですが、実際には黒人とユダヤ系の血が混ざっているとのことです。

 彼女のデビューを一番喜んだのは2曲目のタイトルにもなっているチャーリー・ハーポだったのではないでしょうか。ジャグ・バンドのリーダーだった彼は、1970年頃バンド・メンバーに応募してきた彼女にソロ・デビューを勧めます。彼の薦めでジャズやブルースなどさまざまな音楽を吸収した彼女はバンドを離れてもデビューすることなくグリニッジビレッジのクラブなどで自作の歌などを歌って過ごしていました。1972年、彼女に多大な影響を与えたハーポが興奮剤の過剰摂取により死亡するという事件が起こります。彼の死がきっかけとなってシェルター・レコードからデビューすることになるのですが、その彼への追悼の思いがジャケットの裏に「・・・・・・」と写真とともに記載されています。

さて、本題に入りましょう。優れたシンガー・ソングライターの彼女ですが、このアルバムの中で冒頭の� 淵汽燹Ε�ック)と�ァ淵献Д掘次Ε侫Д蕁次�)のみカヴァー曲になっています。冒頭の�,蓮�原曲のイメージがまったくわからないほどアレンジされており、フィービーの作品といっても良いほどです。ア・カペラ・グループのパースエイションズとの息も抜群で「ブルースの妖精」というキャッチフレーズがぴったりのこの曲を聴いただけでKO間違いなしです。ニューヨークのベテラン・ジャズ・メンを従えてハーポへの想いを歌う2曲目は、私の大好きな曲。テディ・ウィルソンの繊細なピアノにズート・シムズの心に沁みるサックスなどニューヨークの摩天楼の夜景を見ながらバーボンを飲んでいる自分を想像してしまいます。3曲目は、ビルボード・チャートで5位まで上昇したフォーク・タッチの作品です。ラルフ・マクドナルドのパーカッションにマーガレット・ロスのハープの響きが透明感のある彼女の声にマッチしてクリスタルな世界を演出しています。アコースティック・ギターとドブロ・ギターのみの3曲目は、シンプルながらほのぼのとした温かみを感じさせてくれる作品です。彼女のギターとダブル・ベースをバックに歌われる5曲目は、その名のとおりブルースのカヴァーですが、ジャズ的な要素も加わった彼女の素晴らしいヴォーカル・スタイルが十二分に堪能できます。

6曲目からがB面になります。ブルース、ジャズ、R&Bが一体になった作品で、ボブ・ジェームスなどのクロスオーバー的な味付けが堪りません。7曲目は、ボサノバっぽいパーカッションと流れるようなハープが印象的で幻想的な雰囲気のする作品です。8曲目は、ブルース・スタイルの作品でズート・シムズのジャズ色豊かなサックスに加えフィービー・スノウのギターも聴き物です。デイヴ・メイソンがリード・ギターで参加している9曲目は、ややテンポの速い軽快な作品で、ポップ感覚に溢れた作品です。全ての作品でいえることですが、バックを固めるメンバーの演奏力の高さと落ち着きが、彼女にベテラン・シンガーのような貫禄をもたらしています。

新進気鋭のシンガー・ソングライターとして注目を浴びた彼女は、この作品の発表直後にポール・サイモンのアルバム『時の流れに』に参加して、「哀しみにさようなら(Gone at last)」をデュエットして話題になりました。

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