| WEEKLY PICKUP 043 NICKY HOPKINS |
| WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています |
![]()
|
ロックを聴き始めた頃というか、年長の人の横で聴き始めた頃から必ずというほど、その名前を聴いていたキーボード・プレーヤーのニッキー・ホプキンスのアルバムです。発売同時には、その良さを理解することができず、その後も年に一回聴けば良いほうだったと思います。しかし、少しずつ大人になって社会の構成員の一人になり、やっとニッキー・ホプキンスが、何故多数のアーティストから引っ張りだこだったのかが理解できるようになりました。アンサンブルの大切さ、本当のセンスとは、ということだったんだなと、私なりに解釈し大好きなアルバムの一枚になってしまいました。和を乱さない、でも光るセンスでしっかり印象に残っているプレイ、ニッキー・ホプキンスの人となりがさまざまな作品のセッション・プレイに溢れていたんでしょうね。 このアルバムのCD化は95年2月。なんと22年も経っていました。しかし、CD発売の朗報を聞く前の94年9月に悲報を聞いてしまうことになったのです。94年9月6日、アメリカの南部音楽のメッカであるナッシュビルのホテルで急死。目立った活動をしなくなり名前を聞かなくなった80年代、その後90年代になって日本のドラマなどでニッキー・ホプキンスの音楽が使われ始めます。有名なところでは『並木家の人々』でしょうか。これから新たな道でその才能を発揮しようとした矢先の死は、どんなに心残りだったでしょうか。CDを買いライナーに目を通しても、なかなかプレイヤーを回す勇気が出なかったことを覚えています。 回す勇気が出なかった大きな原因はアルバムの一曲目にあるんです。アコースティック・ピアノによる1分半の短いクラシカルなインスト曲なのですが、悲しいくらいに美しいのです。それが分かっているもんだから、なかなか回せなかったのです。2曲目もクラシカルなピアノで始まりますが、ほのぼのとしたブリティッシュ・トラッド風味の曲です。上手くはないけれども味のあるニッキーの声が楽しめる曲です。この曲の中でスライド・ギターを弾いているのはジョージ・オハラことジョージ・ハリソンなのです。3曲目は、ニッキーのピアノをフィーチャーしたインスト曲で、ファンキーでジャジーでブルージーでドラマティック(なんじゃそら)。変化していく曲調がニッキーのセンスと技術の高さを見せ付けてくれます。ここでもジョージが好サポートをみせています。4曲目は、妻に送るラヴ・ソングでブリティッシュ色の濃い作品です。ストリングスのアレンジも最大の効果を上げています。こんな美しい曲をプレゼントするなんて、私には夢のまた夢。5曲目は、アメリカの南部色たっぷりの力強い曲です。ジェリー・ウィリアムスとの共作で、その彼がリード・ヴォーカルを取っています。ミック・テイラーを従えてジョージ・ハリソンがそれとすぐわかるリード・ギターを披露しています。 6曲目は、ストリングスをバックに歌われる壮大なバラード。どことなくビートルズの美味しいとこばかりを集めたようになっているところが好感の持てる素敵な曲です。7曲目も5曲目同様にジェリーとの共作の曲でブギー・ロック仕立てになっています。ブラスも入って楽しさ倍増です。8曲目は、ニッキーの美しいマイナー調のアコースティック・ピアノとストリングスをバックに歌われるバラードです。あまり目立ちませんが、ミック・テイラーらしいエレキとアコースティックによるギターがアクセントになっています。9曲目は、ジェリーとの共作曲でオールマンにも通じるような南部色豊かな曲です。すべてにおいてそうですが、この曲を聴くとニッキーのピアノがいかに素晴らしいバック・アップをしているかが再認識できると思います。最後は、ブギーで締めくくりです。素晴らしいテクニックの安定したリズムで展開されるニッキーのピアノに絡むサックスとの掛け合いが楽しさ満点のインスト曲です。 ビートルズのメンバーをはじめとしてローリング・ストーンズ、ジェフ・ベック、ザ・フーなどのブリティッシュ・ロックの大物、変わったところではグリン・ジョンズとわたったアメリカでセッションに参加したスティーヴ・ミラー・バンドなど60年代後半から70年代前半にかけての名盤といわれる作品に頻繁に名前が登場しますので、初めて当時のロック・アルバムを買われた方はクレジットを見てください。そして、冥福を祈ってください。 |