ロックが誕生した60年代、その発展に大きく貢献することなる多くのバンドがこの年にコンサート、レコードデビューをしています
ロックの歴史に欠かす事のできない67年までのデビュー作68年のデビュー作を集めてみました。
この年は、ブルース・ロックが台頭しイギリスではフリートウッドマック、アメリカではマイク・ブルームフィールドなどのスーパーセッションやジョニー・ウィンターの多額の契約金が話題になります。その一方で、アメリカのウッドストックでは、ボブ・ディランとザ・バンドを中心にルーツ音楽への原点回帰が盛んになりイギリスへも影響を及ぼしていきます。同じくアメリカのロサンゼルスを中心にフォーク・カントリーとロックの融合を試みる動きが活発になります。


まずは1966年に発表された米英の代表的な2枚のアルバムから。
どちらも白人ブルースバンドと言うことで注目を集めたアルバムです。もともとは「白人ブルース」という言葉は、白人にブルースができるかとでもいうような軽蔑した言い方だったのですが、この2枚を筆頭に米英で白人ブルースが爆発したおかげで一つのジャンルとして確立した経緯があります。どちらのアルバムもその発表がセンセーショナルで、その後のロックを加速度的に発展させた原点的な作品です。

JOHN MAYALL & BLUES BREAKERS(1966)

ALL YOUR LOVE / HIDEAWAY / LITTLE GIRL / ANOTHER MAN / DOUBLE CROSSIN' TIME / WHAT'D I SAY / KEY TO LOVE / PARCHMAN FARM / HAVE YOU HEARD / RAMBLIN' ON MY MIND / STEPPIN' OUT / IT AIN'T RIGHTJOHN MAYALL(Vo,Or,P,Hrp)
ERIC CLAPTON(Vo=10,Guitar)
JOHN McVIE(Bass Guitar)
HUGHIE FLINT(Drums)
with
JOHN ALMOND(Baritone Sax)
ALAN SKIDMORE(Tenor Sax)
DENNIS HEALEY(Trumpet)
イギリスのブルースロックを語るにはどうしても外せないグループの最高傑作。もちろんエリック・クラプトンによる効果が見逃せませんが、この後もここから巣立ったメンバーがロック史の中でも重要な役割をしていくという点(クリーム、フリートウッドマック、コロシアム、ジャーニー、ローリングストーンズなどなど)で、ブレーカーズがイギリスにおけるブルース・ロック、ハード・ロックの生みの親であることは間違いありません。
ポップ化の傾向を強めていくヤードバーズに嫌気が差し脱退したクラプトンをジョンメイオールが目ざとく見つけ64年4月からブレーカーズのメンバーに引き入れます。その後紆余曲折(かなり流動的だったらしい)があったものの、ついに66年に本作品(セカンド)を発表。ファーストではメイオールの自作曲が大半を占めていたのに対し、この作品では12曲中4曲が自作曲で他はブルースのカヴァーとなっています。ここらあたりの曲構成にもクラプトンを大事にしているメイオールの気配りが見て取れるように気がしてなりません。全編に渡りクラプトンのギターが活躍しておりますが、特に「RAMBLIN' ON MY MIND」では、初めてのリードボーカル(ソロ)も聴くことができます。この曲は、クラプトンも気に入ったらしくソロコンサートなどでも演奏しています。しかし、これでも満足が行かなかったのか、この作品が発売される頃には、途中でバンドに加わったジャック・ブルースとともにクリーム結成のためグループを脱退。この頃、「GOD」と呼ばれるようになったらしい。

THE BUTTERFIELD BLUES BAND / EAST-WEST(1966)

WALKIN' BLUES / GET OUT OF MY LIFE, WOMAN / I GOT A MIND TO GIVE UP LIVING / ALL THESE BLUES / WORK SONG / MARY, MARY / TWO TRAINS RUNNING / NEVER SAY NO / EAST-WESTPAUL BUTTERFIELD(Vo,Hmc)
MIKE BLOOMFIELD(Vo=10,Guitar)
ELVIN BISHOP(Guitar)
JEROME ARNOLD(Bass Guitar)
BILLY DAVENPORT(Drums)
MARK NAFTALIN(Organ,Piano)
アーバンブルースの本場から出てきたこのグループは、英国のロックの生みの親と言われるブルースブレーカーズとは違った形でアメリカンロックに大きな影響を与えます。マイク・ブルームフィールドとエルヴィン・ビショップという看板ギタリストが二人いるということがブレーカーズとは違うところですし、吐き出される音もどちらかと言うと重く泥臭いブルース(スワンプ系)といったところでしょうか。さすがに、黒人たちの中で図太くやってるよ、とでも言いたげな音です。巷ではジャズが全盛、その他の音楽はボブ・ディランを筆頭にフォークも全盛期を迎えようとしている時期で、若者の関心はヒッピーに代表されるフラワームーヴメントの中心地サンフランシスコ。そのサンフランシスコに惹かれるように移り住み(スティーブミラーなども)ジェファーソン・エアプレインなどのウェスト・コーストのグループに大きな影響を及ぼしていきます。
このアルバムの最大の聞き物は、二人のギタリストによる競演ですが、特にゾクゾクするのは、ジャズのヒットナンバー「WORK SONG」と「EAST-WEST」です。右と左のスピーカーを巧く使って構成されているのには、当時の人たちも大感激だったのでは。「EAST-WEST」では、シタール奏法まで披露しており、その後のスーパーセッションへと繋がっていくんでしょう。

1967年以前にデビューした主なグループ

THE KINKS
The Kinks(1964)
78年にヴァン・ヘイレンがカヴァーしたハードロックの原型となった名曲「ユーリアリーガットミー」を含むアルバム。その独特のサウンドはキンキーサウンドと呼ばれた。
SIMON & GARFUNKEL
Wednesday Morning,3AM(1964)
THE WHO/My Generation(1965)
若さ爆発といった感じのパワフルな記念すべきデビュー作。モッズの代表的存在ですが、音楽的にはR&R,R&B,さらにはパンク的な要素も含んでおり、キース・ムーンのドラミングが大迫力の傑作です。
BYRDS
Mr. Tambourine Man(1965)
ボブ・ディランの作品「ミスタータンブリンマン」で一躍スターダムにのし上がったアルバム。フォークロック、そしてウエストコーストサウンドの基礎となった歴史的名盤。
CREAM
Freash Cream(1967)
ブルースのスタンダードを中心にしたデビュー作。その後の音から比べるとおとなしく聴こえますが、ブルースの新しい解釈を目指しているのが表れています。
PINK FLOYD
The Piper at the Gates of Dawn(1967)
シド・バレット在籍の唯一の作品。作曲もすべてシド・バレットが担当しておりエフェクトを駆使したサイケデリック・スペーシーサウンド。
PROCOL HARUM
Procol Harum(1967)
ジャンルを超えた永遠の名曲「青い影」を含むアルバム。ゲイリー・ブルッカーと詩人キース・リードによる作品たちは親しみ易く美しい。
VANILLA FUDGE
Vanilla Fudge(1967)
マーク・スタインのオルガンを中心にしたデビュー作。知らない間に目立っているリズム隊のカーマイン・アピスとティム・ボガートは、カクタス、BBAへ発展。
JIMI HENDRIX
Are You Experienced?(1967)
米から英に革命をもたらしたジミーのギター、N・レディングの力強いベースのビート、ジャズの香りを残したM・ミッチェルのドラムは、英のロックを根底から覆した。
JANIS JOPLIN
Big Brother & Holding Company(1967)
ジャニスが無名時代の録音によるデビュー作。まだまだ内容的に聴くべきものがあまりないが、初々しいジャニスがいとおしい。
GREATFUL DEAD
Greatful Dead(1967)
ギタリスト、ジェリー・ガルシア率いるブルース・ロックのデッドのデビュー作。本作では、オーソドックスなブルースを演奏している。
THE DOORS/The Doors(1967)
詩人のジム・モリソン(vo)のカリスマ性を確立させた大傑作のデビュー作。ベースレスの独特の音は、その時代の社会性と融合し、神秘の世界を作り出している。
VELVET UNDERGROUND & NICO
The Velvet Underground & Nico(1967)
SLY & THE FAMILY STONE
A Whole New Thing(1967)
音楽性がロック・ポップス・ソウル・ファンクの融合なら、メンバーの人種もさまざま。開花直前の個性豊かなデビュー作。

1968年にデビューしたグループ

主な出来事

2月
67年度グラミー賞でビートルズの「サージェント・ペパーズ〜」がロックのアルバムとして始めて主要部門の最優秀アルバム賞を獲得。

4月
後にハードロックの中心となっていくディープ・パープルがデンマークでステージデビュー。9月に発表されたデビューシングルがイギリスではなくアメリカで大ヒット。

5月
サンフランシスコのロックシーンの土台を築いたスティーヴ・ミラー・バンドがデビュー。しかし、8月にフロントマンのボブ・スキャッグスが脱退。

7月
ナイスがロンドン公演で星条旗を燃やしてヴェトナム戦争反対をアピール。
クリームの解散が発表される。
バーズの南アフリカ公演に非難。

8月
ビートルズが自分たちのレーベル「アップル」からファーストシングル「ヘイ・ジュード」を発表。11月に通称ホワイト・アルバムと呼ばれるようになる「ザ・ビートルズ」を発表。

10月
ニュー・ヤードバーズとして活動していたレッド・ツェッペリンがロンドンのマーキー・クラブでステージデビュー。

11月
7月に解散を表明したクリームがロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでラストコンサートを行う。

12月
ブリティッシュ・インヴェイジョンの先陣として活躍してきたアニマルズが解散。ヴォーカルのエリック・バードンは70年にウォーを結成してデビューする。

C.C.R./Creedence Clearwater Rivival
ロックはどこから生まれたかと言う問いにストレートに答えたようなデビュー作。ブルース、R&B、カントリーなどが一体となった飾り気のない直球勝負の音が清々しい。
THE BAND / Music from Big Pink
針を落とした途端に時間の流れが一変する衝撃のデビュー作。時代の流れに逆行するかのような、どっしりと落ち着き払った南部風のソウルフルな音楽が、既にビッグスターの貫禄すら感じさせます。今だからこそ、聞き直したい作品ではないでしょうか。
B.S.&T.
Child is Father to The Man
アル・クーパーが中心となったブラスロックの火付け役になったアルバム。アルはすぐにグループを去ることからも、かなり実験的な要素を含んでいたのではないかと思われます。評価としては分かれるところですが、私的にはセカンドのほうが・・・。
STEVE MILLER BAND/Children of The Future
アーバンブルースの本拠地シカゴからフラワームーブメントの中心地であるサンフランシスコへ移り、独自の解釈でブルースを表現した傑作。次作の「SAILOR」も同じコンセプトで作られており聴く価値ありの作品です。サイケデリック・スペーシー・ブルースとでも表現しておきましょう。
SANTANA/Santana
図太いギターとハモンドオルガンに絡むラテンパーカッションとアフリカンリズムすべてが新しかった。インストゥルメンタルにこそサンタナの真骨頂がある。鳥肌が立ちまくりのラテンの嵐。ブルースとラテンの融合がこんなにすばらしいなんて、ありがとうサンタナ。
JAMES TAYLOR
James Taylor
英国のアップルレコードからのデビュー作。本人の怪我などもあり、あまり話題にならなかったためアメリカに戻りワーナーと契約。その後歴史に残る「Sweet Baby James」「Mud Slide Slim & The Blue Horizon」の2枚を発表しスターダムにのし上がる。
LED ZEPPELIN/Led Zeppelin
ツェッペリン流ブルース解釈の答えは、こうだと言わんばかりの衝撃のデビュー作。プラントの声、ボーナムのドラム、どれもド迫力で迫ってきます。ハードロックであり、既にヘビーメタルでもある。また、プログレッシヴでもある。
DEEP PURPLE
Shade of Deep Purple
まだまだ、ハードロックとは呼べない第一期ディープパープルのデビュー作。アメリカでシングル「ハッシュ」のヒットに代表されるようなポップな曲が並んだアルバム。
THE BIRDS/SWEETHEART OF THE RODEO
新加入のグラム・パーソンズによりカントリーとロックの融合を目指し、ボブ・ディランのアルバム録音で有名になったカントリーの本場ナッシュビルで敢行。ロックの新しい方向性を示した名盤。
AL KOOPER/Live Adventure
アル・クーパー、スティヴン・スティルス、マイク・ブルームフィールドによる決め事のないジャム・セッションをそのままレコーディングした実験的なアルバムで、スティルスとブルームフィールドの対比などが楽しめる作品です。
TRAFFIC
Mr. Fantasy
S.ウィンウッド、D.メンスン、C.ウッド、J.キャパルディによるデビュー作は、メンバーの音楽も新鮮である事は確かだが、製作に携わったフロデューサー、エンジニアが、この後ストーンズやツェッペリンに登用されるほど斬新なアルバムだった。
JEFF BECK GROUP / Truth
ヤード・バーズを脱退したジェフ・ベックがロッド・スチュアート、ロン・ウッド、ミック・ウォーラーと結成した第1期JBGのデビュー作。ジェフ・ベックとロッド・スチュアートの駆け引きがたまらなくかっこいいアルバム。
THE MOVE / Flowers in The Rain
天才であり奇才であるロイ・ウッド率いるバンドのファーストとセカンドのカップリング盤。メロディーメイカーとしての才能はファースト、ストリングスの使用による後のELO的楽曲はセカンド。どちらにしても天才振りがうかがえる。ジャケットアートも当時らしくて大好きです。
VAN MORRISON / Astral Weeks
R&Bをベースとしたソウルフルなヴォーカルが特徴のモリソンが、ゼム脱退後に発表したソロ・デビュー作。リズムセクションにジャズ畑の人間を登用し哀愁たっぷりに聴かせてくれます。ヒットしか考えないレコード会社やヒット曲しか聴かない観客と喧嘩しただけのことはあります。
STEPPENWOLF/Steppenwolf
映画「イージーライダー」の主題歌になった「ワイルドで行こう」に代表される爆発寸前の60年後半の時代を表現している。