URIAH HEEP DISCOGRAPHY
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70年代前半に数々のヒットを飛ばし、一躍スターダムにのし上がったユーライア・ヒープ。アコースティックとエレクトリックを巧みに組み合わせたサウンドは他に類を見ないものでした。75年のゲイリー・セインの感電事故(76年に死亡)による脱退を機にメンバーが、次々にバンドを離れていきますが現在もオリジナルメンバーであるミック・ボックス(g)を中心に活動しています。バンドに参加した延べ人数は20人を優に超え、作品にもそれぞれの時代の浮き沈みを感じますが、準A級バンドしての誇りは捨てていないようです。
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◆ 全盛期だった70年代前半
ユーライア・ヒープの特徴が一番現れているのが70年代前半ではないでしょうか。変幻自在のデヴィッド・バイロンのヴォーカルにワウワウを効かせたミック・ボックスのギター、重厚なケン・ヘンズレーのハモンド・オルガン、この三者が一体になり美しいコーラス・ワークがプラスされたサウンドは唯一無二の存在でした。1作から3作目まではリズム隊が一定せずメンバーがつど変化しますが、4作目からは最強の布陣で意欲的に作品を発表していきます。日本でもこの時期の作品(3作目〜7作目)からのメロディアスでキャッチーなシングルカット曲は、ヒットチャートを賑わし、バンドもチャートの常連として高い支持を得ていました。中でもロジャー・ディーンのアルバム・カヴァー・デザイン(4、5作目)は、彼らを魔法使いや悪魔と結び付けさせ神秘的な世界観をも加えていくのでした。しかし、この時期の完成されたスタイルが、その後のヒープを苦しめる結果にもなるのです。75年のアメリカ・ツアーでのゲイリー・セインの感電事故、療養のための脱退、ドラッグによる死(76年)。ここから負の連鎖がヒープを襲うのです。
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◆ オリジナルメンバーの脱退
ゲイリー・セインの後釜は、なんとジョン・ウェットン。報酬の良さが彼を動かしたとも言われていますが、彼が加わった最初の作品『Return to Fantasy』(作曲には加わらず演奏のみ参加)は、皮肉にもヒープ最大のセールスを記録することになります。しかし、そのウェットンも次作でヒープを去ります。と同時にアルコールでの問題を抱えていたデヴィッド・バイロンが解雇されてしまいます。鼎脚の一本であったバイロンが去り、新しいヴォーカルとベースにジョン・ロートンとトレヴァー・ボルダーを加え『Firefly』を発表し再起を図ります。この布陣でその後2枚のアルバムを発表、重厚なハード・ロックを展開します。安定するかに思われましたが、次はジョン・ロートンとドラムのリー・カースレイクが脱退、メンバー間の確執が表面化し目まぐるしいメンバーの交代が起こります。『Conquest』製作ではリード・ヴォーカルに新加入したジョン・スローマンを巡ってケン・ヘンズレーと他のメンバーの意見が合わず、ついにヒープの多くの楽曲を手がけてきたヘンズレーが脱退してしまうという事態に陥ったのです。
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◆ がんばれミック・ボックス
一人になったミック・ボックス、バンド存続の危機を何とか乗り越えようとします。早速、リー・カースレイクを呼び戻し、キーボードにジョン・シンクレアを加えた新しいメンバーで『Abominog』を発表し80年代もコンスタントに良質の作品を発表し続けます。ピーター・ゴールビーをリード・ヴォーカルに迎えた80年代前半の作品は、疾走感のあるロックを展開し新しいヒープのイメージを作りあげました。『Equator』を最後にゴールビーが去り、現在まではバーニー・ショウがリード・ヴォーカルを務めています。90年代は、『Sea of Light』でロジャー・ディーンとのコンビが復活したり元気なところを見せてくれていましたが、1998年の『Sonic Origami』発表から2008年発表の『Wake The Sleeper』までは世間の再結成ブームの影響なのかライヴ活動が中心になっていました。そして2011年の現在、2009年のセルフカヴァー『Celebration』を挿み『Into The Wild』で完全復活を遂げているのです。今なお年間250回ものライヴで演奏し続ける彼らに感動すら覚えます。
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ヒープ全盛期(1972-1975)
左より
David Byron (Vo), Lee Kerslake (D) Ken Hensley (Key), Mick Box(G) Gary Thain(B)
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Very 'eavy... Very 'umble (1970)
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Salisbury (1971)
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日本でもヒットした「ジプシー」を含むデビュー作です。私が買ったのは、3、4、5枚目の後だった(?)のでインパクトとしては弱い感じが最初はしましたが、聴き込めばなかなかの作品であるということに気が付きます。ハード・ロックが花開く時期の作品としてはスケールの大きさも含めて一級品です。けしてツェッペリンにも負けていない(?)
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煙幕を張りながら突進してくるイギリスを代表するチーフテン戦車が印象的なセカンドアルバムです。インパクトのある作品が少ないせいか地味な作品ですが、16分を超える大作のタイトル曲をはじめ聴き応えのある曲が揃っています。美しさという点でも他の作品には引けを取りません。「肉食鳥」「黒衣の娘」などの曲名、もちろんジャケットも気に入っています。
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LOOK AT YOUSELF (1971)
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DEMONS AND WIZARDS (1972)
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THE MAGICIAN'S BIRTHDAY (1972)
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邦題が『対自核』、発売当時中学生だった私にはどう訳せばそうなるのか(今でも?)不思議でならなかった三作目です。日本での(世界でかな)人気を爆発させたタイトル曲(あのオシビサも参加している)をはじめ「七月の朝」、「ラヴ・マシーン」など名曲揃いのアルバムなのです。彼らの作品の中でもへヴィさではトップクラスでしょう。 |
ロジャー・ディーンの幻想的なカヴァー・アートそのままの世界が展開するコンセプト作品です。これまで以上にアコギやピアノを強調したアコースティックな展開を随所に散りばめて、お得意の絶妙のハーモニーが加わるという彼らの独創的なプログレッシヴ・ハード・ロックを堪能してください。
詳しくは WEEKLY PICK UP 034
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またまたR.ディーンのカヴァー、カヴァー同様作品の内容も最高に素晴らしいコンセプト作品です。前作との録音期間も近く(半年差)曲構成や雰囲気も似ているため兄弟作品として聴いていただくのがベストです。緩急のある素晴らしい曲をちりばめたアルバムは、ついに完成の域に達しています。
詳しくは ROCK STANDARD 031
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SWEET FREEDOM (1973)
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WONDER WORLD (1974)
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RETURN TO FANTASY (1975)
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誰の発案なのか?発売当時は、和やかなメンバーの写真に思わず引いてしまいそうなジャケットに驚きました。アルバムの内容は、これまでの延長線上にあるとは言うものの、バンドが安定しているためか落ち着いた感じになっておりシンプルさも増している感じがします。とは言うものの佳曲がそろっており良い作品です。 |
やはりヒープのイメージにはこういうカヴァーが似合います。内容もシンプルさが強調されてはいますが名曲がそろっており、この時期のバンドがいかに充実していたかがわかる作品です。この作品を最後にバンドは悪魔祓いをし、新たな方向性を模索する旅へと向かいます。
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ジョン・ウェットン(b)が参加した第一作です。多少アメリカナイズされポップになった曲もありますが、ブリティッシュ・ロックの雄として貫禄を見せ付けてくれる出来上がりになっています。ただ、ウェットンは曲作りには参加しておらず、参加しておればもう少し重厚になったのでは。
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HIGH AND MIGHTY (1976)
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FIREFLY (1977)
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INNOCENT VICTIM (1977)
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前作から参加のJ.ウェットンの影響か、かなりソフトな印象のする作品に仕上がっています。J.ウェットン参加であればもっとソリッドな感じになるかと思っていた私には少々物足りなさを感じてしまいました。それでもメロディアス・ヒープの特徴は活かされており出来は悪くありません。 |
ヴォーカルにJ.ロートンを迎えた第一弾です。そのJ.ロートンを活かしたシンプルなハード・ロック路線が強調された中にもドラマティックな作品が配置され、ファンタジックなカヴァー・デザインが加わってD.バイロン不在を感じさせない出来上がりになっています。
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ここまでバラエティに富んだ作品はバンド史上類を見ない作品です。ハードな作品からレゲエを取り入れた作品、メロディアスな作品と聴くほうが困惑(?)してしまいそうなくらいです。ジャケットとの印象の違いも拍車をかけているかもしれません。しかし、J.ロートンの良さは引き出しているかなと。
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FALLEN ANGEL (1978)
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CONQUEST (1980)
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ABOMINOG (1982)
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艶っぽいSFチックなジャケットが印象的です。内容はアコースティック・ギターの多用でおとなしい印象のする作品で物足りなさを感じる方も多いかと思います。バンド内のごたごたが現れたのか特徴のない仕上がりに思えます。バンド自身の方向性で悩んでいたのかもしれません |
太平洋戦争時の硫黄島占領の写真と銅像を模したカヴァーデザインもイマイチヒープらしさが感じませんが、M.ボックス(g)・K.ヘンズレー(key/g)・J.スローマン(vo)・T.ボルダー(b)・クリス・スレイド(dr)というスーパーなメンバーとしては一般的なハード・ロックに終わったのが残念です。
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心機一転、復活の狼煙。というイメージのジャケットと邦題『魔界再来』ですが、これが意外とメロディアスな作品で拍子抜けしてしました。楽曲そのものは良くできているし、新ヴォーカルのP.ゴールビーもうまいのですが、昔の幻影にとらわれているのが悪いのでしょうか、ガツンとくる一発がほしい気がします。
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HEAD FIRST (1983)
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EQUATOR (1985)
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RAGING SILENCE (1989)
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前作を踏襲しハード・ポップ路線をさらに強めた作品です。個人的には、ピーター・ゴールビー期の作品はあまり聴く機会のない作品ですが、出来は悪くありません。でも、M.ボックのワウワウが炸裂しないのは、寂しい限りです。 |
ハード・ポップ路線の第3弾。ここまでメロディアスでハードに徹していれば、こちらが白旗を揚げないと、という感じです。ヒープに昔の幻影を抱いていない人には、かなり良質なロック・アルバムという印象が残ることでしょう。
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新ヴォーカリストにバーナー・ショウを迎えての第一弾です。これまでに比べれば、やや軽さが目立つかなというという感じですが、バンドの方向性としてはこれまでと同じくハード・ポップ路線が受け継がれているように思われます。
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DIFFERENT WORLD (1991)
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SEA OF LIGHT (1995)
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SONIC ORIGAMI (1998)
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バーニー・ショウ(vo)参加の第2弾です。ギターやハモンドオルガンが控えめでドラマティック性や派手さでは他の作品に劣るもののタイトでハードなどっしりとしたロック作品に仕上がっています。どちらかといえば玄人受けする作品とでもいうのでしょうか。 |
これこれ、すばらしいカヴァーがR.ディーン、楽曲もカヴァーのイメージ同様の印象、これこそヒープです。切れの良いギターワークがさえるM.ボックスの魂が炸裂するような、プログレッシヴでハードなロックが展開されます。聴き終わった後の爽快感がたまりません。
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けして出来が悪いわけではありませんが、全体的にバラード系(歌メロ)が多く地味な作品。ほどよくアメリカナイズされているあたりは聴きやすいのですが、消化不良気味になるのは私だけではないと思います。良い曲もあるのですがねえ。
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WAKE THE SLEEPER (2008)
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URIAH HEEP LIVE (1973)
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LIVE IN MOSCOW (1988)
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何と10年ぶりのスタジオ作品で見事なまでの復活です。タイトル曲でのM.ボックスのギター、うねるハモンドオルガン、美しいコーラス、そして疾走感、大満足のオープニングなのです。が、あまりの出来に他の曲が割を食っている感が無きにしも非ずです。 |
バンドが全盛期の時期のライブ作品であるため、その魅力が十二分に伝わってくるライブの名盤です。シングルヒットした曲は勿論、ロックンロールのメドレーまで披露するという演奏内容は、彼らに対する印象を覆すには十分、圧巻のひとこと。
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今でこそモスクワでのライヴ作品は多数発表されていますが、社会主義体制のモスクワでの西側諸国のバンドとしては初めてのライヴ、ペレストロイカのおかげでソビエトにもハードロックが一般的になった記念すべき作品なのです。でも、なぜヒープだったのか。
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THE BEST OF ... part1 (1976)
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CELEBRATION (2009)
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INTO THE WILD (2011)
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人気に陰りが見えてきた76年に発売された最初のベスト盤。75年までの8枚のスタジオ作品から選曲されていますが、選曲には疑問が残るのも事実です。入門編としてもヒープの魅力が伝わるかどうか……。 |
セルフ・カヴァー曲?曲を含む作品ですが、おざなりのカヴァーになっていないところがうれしい作品です。ハード・ロックは、こうあるべきという勢いを感じさせてくれる楽曲が詰まっています。元気印のおまけDVDも必見です。
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ミック・ボックスが元気だ、という印象が強い作品に仕上がっています。キーボードとのコンビネーション、コーラスワークなどヒープの作品の中でもかなりの出来ではないでしょうか。これぞヒープ・サウンド、2011年になってこれほどの作品が聴けるとは。
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ACOUSTICALLY DRIVEN (2001)
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ELECTRICALLY DRIVEN (2001)
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THE MAGICIAN'S BIRTHDAY PARTY (2002)
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2000年12月9日ロンドンのマーメイド・シアターで行われた管楽器とコーラス隊を加えたアコースティック・ライヴの模様を伝える作品。後に映画化されDVDも発売されました。ゲストにジェスロ・タルのイアン・アンダーソンが参加(2曲)してます。 |
2001年3月23日のロンドン・アストリア公演のライヴ音源。アコースティックがあるならという発想でしょうが、その安直さに敬意を表します。ゲストには、またもや一本足奏法のI.アンダーソンが参加です。私の場合、ジャケット欲しさに買ってしまった作品。
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ゲストにK.ヘンズレー(M.ボックスとのツイン・ギターが感動)、ジョン・ロートン(ツイン・リード・ボーカル?が圧巻)、ヨーデルおじさんことFOCUSのT.V.レアーが参加した2011年11月7日のロンドンでの公演のライヴ音源です。話題性だけでなく内容も充実、ぜひDVDで。
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