BUDGIE  DISCOGRAPHY
云わずと知れた超B級バンドのバッジー(BUDGIE:オウム)の御紹介です。ロック・バンドとしては最小のユニット(ドラムス、ベース、ギター)でありながら、クリームやベック、ボガート&アピスとは一線を画すバンド・スタイルで1970年代中期を中心に押しに押し捲ったバンドです。1980年頃から始まるNWOBHMブームにより再評価がなされいったんは再浮上しかけますが、さすがに超の付くB級バンド、また潜行してしまいます。しかし、メンバーチェンジはあるものの現在も活動を続ける長生きバンドでもあります。
◆ 彼等の魅力とは

その魅力はなんと言ってもシンプル&ハードということでしょう。最小のユニットから繰り出されるサウンドは、重厚で迫力満点。音の薄さをカヴァーするために鋭角なギターとくぐもったベースがユニゾンで展開しうねりを上げる様は、天才的なギタリストとテクニカルなベーシストを要したクリームとBBAのサウンド追求とはまったく違った方法論です。それに加わるバーク・シェリーのハイ・トーンのヴォーカルがバッジーというバンドに更なる個性を与えるのです。また、アルバムの中で唐突に現れるアコースティックでメロディアスなナンバーも魅力のひとつでもあります。ロックの発展の中でテクニカルな部分が強調された70年代前半、その中に埋もれてしまい一部のファン層にだけ支持されたのはもったいないことでした。重厚でありながらシンプルかつストレートなサウンドは、何度聴いても、飽きの来ない素晴らしいものなのです。
◆ コアなファン層を築いたMCA時代

バッジーは、‘67年に英国北部のカーディフで結成されました。結成時のメンバーは、ハイトーンの声と力強いベースラインが特徴のバーク・シェリー(vo,b)、重厚な音色が特徴のトニー・ボージ(g)、レイ・フィリップ(ds)。三人は4年間の地道な活動が実り‘70年にMCAと契約、‘71年に待望のデビューを果します。その後、『SQUARK(`72)』『NEVER ・・・・・・(`73)』とコンスタントに作品を発表しますが、なかなか世間に認めてもらえません。作品そのものは出来が悪いというわけではなく楽しめる内容なのですが、アルバムの統一性という点では今ひとつという評価だったのでしょうか。そんな彼等が表舞台に出てきたのは、ドラマーがピート・ブートに交代した4作目の『IN FOR……(`74)』が、初めてチャート・インしたころからでしょうか。続く『BANDOLIER(`75)』もチャートインを果たし見事にB級バンドとしての地位を確立するに至るのです。
◆ A&M、RCA時代

MCAとの契約が切れた彼等は、北米エリアでの人気獲得に尽力してくれたA&Mと新たな契約を結びアメリカ侵攻のため移住してしまいます。しかし、76年当時のアメリカの音楽界の流れに沿ったかのような重厚さのないスマートなバッジーは、積極的な活動とは裏腹になかなか受け入れてもらえなかったのです。A&Mでは、2枚のアルバムを残しましたが、その間にギタリストがジョン・トーマスに代わるなど苦しい時を過ごします。心機一転RCAのインディーズから12インチシングル(4曲入)を発表、‘80年に『POWER SUPPLY』を発表します。おりしもNWOBHMブーム花盛りの英国、レディング・フェスティバルにも出演した彼らは再浮上を果すのです。そうなればRCAもほっとかない。メジャーのRCAからの『NIGHT FLIGHT(`81)』へと繋がります。しかし、ファンの求める方向性にズレが生じ『DELVER……』からはキーボードも導入、まったく別のバンドになってしまうのです。
1974 - 1978 Line up


 左より
 BURKE SHELLEY (B,Vo)
 STEVE WILLIAMS (Dr)
 TONY BOURGE (G)
BUDGIE
(1971)
SQUAWK
(1972)
初期ブラック・サバスのプロデューサーだったロジャー・ベインの起用がピタリと的中した作品です。バーク・シェリーのハイトーンのヴォーカルが摩訶不思議な感触で、好きになればとてつもなく美しく聴こえるのです。特に1曲目はハード・ロック史上に燦然と輝く名曲だと勝手に思っています。デビューの勢いそのままのスタジオ・ライヴの一発取りの雰囲気がそのまま伝わってきます。 イエスでおなじみのロジャー・ディーンの手になるSR-71を模したジャケットが印象的な作品です。プロデュースは、前作同様R.ベインですが、今度は一発取りではなく時間をかけて製作されたおかげで完成度の高いアルバムに仕上がっています。メロトロンを使用した作品もありますが、小細工には走らず一作目同様シンプルかつへヴィーに迫ってくれます。半分の作品は、名曲といっても過言ではありません。
NEVER TURN YOUR BACK ON A FRIEND (1973) IN FOR THE KILL
(1974)
BANDOLIER
(1975)
前作に続いてのR.ディーンのカヴァー・アートが非常に素晴らしい作品ですが、若い方(?)には、メタリカがカヴァーした「BREADFAN」の原曲(A-1)を収めた作品として有名でしょう。その他にも長尺の切ないバラード「PARENTS」やとことんハードに迫ってくれる「IN THE GRAIP ……」など完成度の高い作品が詰め込まれています。セルフ・プロデュースの作品。 再びロジャー・ベインをプロデューサーに迎えて制作された作品です。邦題は『脳手術の失敗』という凄いタイトルがつけられていました。71年の作品であるA−2はさすがにこのアルバムの中では違和感を覚えますが、前作での自信と手応えが充分に発揮されたハード・ロックの名盤です。初のチャートインを経験し彼等の出世作となった作品でもあります。 MCAからの最後となったセルフ・プロデュースにより製作された作品です。本作、前作、前々作とドラマーが後退したのも影響しているのかファンキーな面も見え隠れしてきました。世の中の流れといえばそうなのですが、もう少しガンガンやってほしかったと思ってしまうのは私だけでしょうか。しかし、前作同様にチャートインした作品でもあります。
IF I WERE BRITTANIA I'D WAIVE THE RULES (1976) IMPECKABLE
(1978)
POWER SUPPLY
(1980)
バッジーらしいといえばバッジーらしいといえる作品で、バッジーを始めて聴く人には大変つまらない作品です。名曲A−1での「エノケン(古い!本来はANNE NEGGENです)」の連呼が有名?な作品でもあるのですが、クィーン風のギター・サウンドに挑戦したりと自分達の方向性が一定していない作品でもあります。しかし、そこがB級バンドの素晴らしさでもあるのです。 重厚なギター・リフを聴かせてくれたオリジナルメンバーのギタリスト:トニー・ボージが参加した最後の作品です。世の中のAOR路線に倣ったかのような作品があったりファンキーさも益しており、ファンでなくとも首を傾げたくなる作品です。初期のバッジーの臭いが皆無とは言いませんが、まったくの別バンドといった感じです。 心機一転NWOBHMブームの余勢を駆って発表した作品ではありますが、ギタリストの交代でさらに別のバンドへと進化(?)してしまいました。もうここまで来るとバーク・シェリーのハイ・トーン・ボイスだけでは如何ともし難く、B級バンドとしての雰囲気すら失ってしまっています。何をどう勘違いしてしまったのか???
NIGHTFLIGHT
(1981)
DELIVER US FROM EVIL
(1982)
AN ECSTASY OF FUMBLING THE DEFINITIVE ANTHOLOGY (1996)
ジャケットの雰囲気だけが全盛期だった頃のバッジーを髣髴とさせてくれる悲しい一枚なのです。アルバムの内容はバラエティに富んだ創りになっているのですが、のっぺりした印象は拭えず昔からのファンには物足りなさだけが虚しくこだまする作品です。 ついに終焉を迎えてしまうのだな、ということをはっきりと認識させてくれた作品です。よくぞ、ここまで付き合ったと自分をほめてあげたいくらいです。A面とB面の最後を飾る2曲が初期のバッジーを思い起こさせてはくれますが、今となっては悲し過ぎます。 バッジーというのは不思議なバンドで、これまでもベスト盤CDが数種類発売されては廃盤になっています。この2枚組CDもそうかもしれません。全ての時代から選ばれていますが選曲はやや不満あり。中期までのベスト盤が出ればお薦めなのですが。