LOGGINNS & MESSINA  DISCOGRAPHY 008
 夏が来〜れば♪思い出す〜♪ではありませんが、私にとっての夏の定番はエアサプライでもチューブでもなくロギンス&メッシーナなのです。デュオになってからの2枚目(共同名義では3枚目)の『FULL SAIL』が私の夏の定番作品ですが、ジャケもさることながらJ.メッシーナの弾く乾いたテレキャスターの音が気だるい夏に最高なのです。
 といっても、トロピカルな作品ばかりというわけではありません。カントリー・ロックやフォーク・ロックが基本になっているジム・メッシーナとソウルフルな感覚を備えたケニー・ロギンスが合体し洗練されたウエストコースト・サウンドが楽しめる作品が多くあります。
結成のきっかけ
二人を引き合わせたのはレコード会社CBSコロンビア。ニッティ・グリッティ・ダート・バンドが、彼らの最高傑作といわれる『UNCLE CHARLIE AND HIS DOG TEDDY』で当時無名だったK.ロギンスの「プー横丁の家」を取り上げたことがきっかけでK.ロギンスがCBSコロンビアとシンガー・ソング・ライターとして契約をします。そのプロデュースに当たったのが新人プロデューサーとしてCBSコロンビアと契約していたJ.メッシーナだったのです。レコーディングが進むにつれ意気投合した二人は共同名義での作品発表を決意します。当然そこには、無名の新人のソロよりもバッファロー・スプリングフィールドやポコで活躍していたJ.メッシーナの名前を入れることでセールス的に成功しやすくなると思ったCBSコロンビア側の意図も働いたことでしょう。
デュオと思われがちですが
L&Mという名前ですので詳しく知らない方はデュオだと思っていらっしゃると思います。しかし、メンバー全員がパーマネントではありませんが、実態はバンドとして存在しているのです。表ジャケットには二人しか写っていないのですが、裏ジャケや内ジャケにはメンバーの写真がしっかり名前入りで掲載されている作品が多いのです。現在は(07年5月)紙ジャケで全作品が発売されていますので購入の機会としては絶好です。歌メロを中心にしているのは確かですが、作品に花を添えてジャジーに、ソウルフルに、トロピカルにとアレンジを施しているのが他のメンバー達なのです。R.シムズ(b)とM.ブリガンテ(dr)のリズム隊、ジャジーに迫る管楽器奏者のJ.クラーク、パーカッションのミルト・ホランド(ずっとゲストだった?)はバンドになくてはならない人たちです。
実はプログレッシヴ
日本ではシングル・チャートを賑わした「ママはダンスを踊らない」や「マイ・ミュージック(放課後のロックンロール・パーティ)」などR&R的な作品の影響からかポップ・デュオとしての認識が浸透している気がしますが、カントリー、フォークを中心にしながらもプログレッシヴな感覚を備えた音楽性はもっと評価されても良いと思っています。歌メロも美しい作品が多いのですが、なんと言っても彼らの魅力はインストにあります。カントリーの流れを汲むフィドルはもちろん、ジャジーな雰囲気たっぷりのサックスや流れるようなフルートなどの管楽器を用いてスリリングに展開されるやや長めの6分前後の作品はプログレと呼ぶにふさわしいものです。その魅力がたっぷり味わえるのが彼らのライヴ作品『オン・ステージ』の「アングリー・アイズ」や「ヴァヒーヴァラ」なのです。


 左より
 ケニー・ロギンス
 ジム・メッシーナ
 2005年リユニオン・ツアーより
Sittin' In
(1971)
LOGGINS & MESSINA
(1972)
L&MではなくL with Mではありますが、事実上のデビュー作です。後期にはあまり感じられなくなる適度な湿り気と緊張感が心地よい作品です。とくに、個性豊かなジムのギターから始まるA面は、作品、アレンジ、演奏のどれもが素晴らしく、しっとり聴かせる曲から軽快なラテン調さらには組曲までとバラエティに富んだ構成になっており彼らの力量を遺憾なく発揮した傑作です。「プー横丁の家」の本人バージョンが収録されています。 日本でもヒットした軽快なR&Rの「ママはダンスを踊らない」を含む作品です。反戦歌ともとれる「Golden Ribbon」のように社会的なメッセージを含んだ作品もありますが、ピュアなカントリー作品やジャズテイスト溢れる作品などバンドの結束が強まった感じのする曲ばかりです。特に最後の「アングリー・アイズ」はライヴの素晴らしさで有名な実験的でプログレッシヴな作品。
詳しくはこちら WEEKLY PICK UP 023
FULL SAIL
(1973)
ON STAGE
(1974)
MOTHER LOODE
(1974)
もう何度聴いたかわからない作品です。もともとラテン調の作品もちらほら収録されてはいましたが、本作品ではハワイで撮影された写真をジャケットに使い明るいイメージで勝負しています。ラテンというよりはカリプソなのでしょうけど、スティール・ドラムも参加した作品などは暑い夏にはもってこいです。ディズニーの「アンダー・ザ・シー」を想像してもらえばわかりやすいかも。ただ、それだけではないところがL&Mの真骨頂です。
詳しくはこちら ROCK STANDARD 043
L&Mの底力が知りたい方に是非お勧めしたい作品です。K.ロギンスの弾き語りからステージが始まり、ジムとメンバーが加わるとムードが一新されカントリーテイスト溢れる大R&R大会へと盛り上がります。後半はバンド・アンサンブルをこれでもかと見せ付けるような緊張感溢れるプログレッシヴな曲構成。最後に再びR&Rのヒット曲で幕を閉じるというステージは臨場感たっぷりなのです。チケットを模したジャケットも雰囲気が盛り上がります。 彼らの作品の中では一番落ち着きがあり美しい作品です。要因のひとつはK.ロギンスのヴォーカリストとしての成長です。後に流行するAOR的な雰囲気も加わっています。もうひとつは、これまでのソウル、ジャズ、カリプソなどの要素にアイルランド・スコットランドのトラディショナル・フォークの要素が加わりフィドル、マンドリンがフィーチャーされた曲が多いことも上げられます。S.ワンダーで有名なクラヴィネットや日本の琴なども効果的に使用されワールドワイドな仕上がりです。
SO FINE
(1975)
NATIVE SONS
(1976)
FINAL
(1977)
次回作『ネイティヴ・サンズ』と同時期に録音されていた作品で、全曲が50、60年代のヒット曲のカヴァーで構成された作品です。とくに、J.メッシーナにとっては憧れのギタリストだったジェームス・バートンやスコティ・ムーアが演奏していた曲もあり思い入れは深かったのではないでしょうか。この作品は、次回作から受ける原点回帰的な印象に影響していることは確かだと思います。ジムのギターが大活躍のカヴァー集です。 アメリカ建国200年の年に発表された最後のスタジオ作品。アメリカの現実を見つめ直す意図が込められた作品で捨て曲なしの傑作です。全体の印象としは初期の雰囲気を感じさせるものですが、アレンジや展開は数段レヴェルアップしています。曲によってはストリングスなども導入し、ドラマチックで壮大な印象の作品もあります。しかし、K.ロギンスとJ.メッシーナの音楽的な方向性は違ってきたな、と思うのは私だけでしょうか。 彼らの解散前のステージからの作品のためか、『オン・ステージ』と比べれば緊張感の無さが気にはなりますが、逆にリラックスしたムードに溢れた雰囲気で進んでいくステージに加えて、スタジオ録音とは違ったメドレーもあったりして聴いていてもそれなりに楽しめます。新曲が2曲含まれていますが新録ということではなさそうな気がします。
JIMMY MESSINA
OASIS(1979)
KENNY LOGGINS
NIGHTWATCH(1978)
KENNY LOGGINS
KEEP THE FIRE(1979)
J.メッシーナの初となるソロ作品です。ジャケのイメージ通りのトロピカルで都会的な雰囲気たっぷりの曲が詰まっています。曲自体もジムらしいものばかりなのですが、私的にはギタリストとしてのジムを期待していたので少し期待はずれでした。しかし、コンポーザー、プロデューサーとしての力は遺憾なく発揮されておりJ.メッシーナの面目躍如といったところでしょう。 ボブ・ジェイムスをプロデューサーに起用しての二作目のソロ作品です。前作『未来への誓い』同様ソウルフルで粘り気のあるヴォーカルを披露しており魅力的な作品に仕上がっています。S.ニックスとの共演作「二人の誓い」やドゥビー・ブラザーズによってグラミーに輝いたM.マクドナルドとの共作「What a fool believes」が収録されています。 プロデューサーがB.ジェイムスからトム・ダウドに変わったことでロック色が強まった第三作です。メロウな感覚よりも力強さを強調した演出によりK.ロギンスのパワフルな面が引き立ちタイトで小気味良い仕上がりになっています。M.ジャクソン、M.マクドナルドなどのゲストの参加も話題になりました。