WEEKLY PICKUP 081 WIDOWMAKER (incl. Discography) |
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています |
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地デジになったからというわけではありませんが、実家の整理をした際に持ち帰ったレコードのデジタル化に挑戦中(CDに買い替えるお金がない)です。その中でいくつかの気になるB級バンドのレコードが出てきました。そのデジタル化第一弾としてご紹介するのがウィドウメイカーです。 60年代後半から70年代前半にかけて活動していたハード・ロック・バンドもロックの成熟期を迎える70年代中期にはレッド・ツェッペリンやディープ・パープルなどのA級バンドを除き解散の憂き目をたどり、メンバーも前半に結成したバンドを離れ他のバンドに移ったり新しいバンドを結成したりと試行錯誤の時代に入っていきます。 そういった時代の1975年に結成されたバンドのひとつにウィドウ・メイカーがあります。ギタリストのルーサー・グロブナー(アリエル・ベンダー)は、スプーキー・トゥース、モット・ザ・フープル(ミック・ラルフスの後釜)の出身、リード・ヴォーカルのスティーヴ・エリスは、ハード・ポップバンドのラヴ・アフェア出身、もう一人のギタリストであるヒュー・ロイド・ラングトンは、ホークウィンド、ベーシストのボブ・デイズリーはブルース・バンドのチキン・シャック、ドラムのポール・ニコルズは、日本でもヒットを飛ばしたフォーク・ロックのリンディスファーンの出身です。それぞれの出身バンドが70年前後に活躍し、それなりに名前も売れていたわけですが、新しいロックの波に乗ることが出来ず(?)解散したり、大幅なメンバーチェンジをしていきます。 さて、彼らは活動中に2枚のアルバム、『WIDOWMAKER』『Too Late To Cry』を残しています。どちらもカテゴリー的にはハード・ロックに分類されます。ほとんど日本では話題にならなかったとはいえ、楽曲そのものには聴く価値のある作品も多く含まれており、このまま埋もれさせるには惜しいという気持ちもあります。 では、彼らのデビュー作品からはじめましょう。アルバムの出来という点では、このデビュー作品が2枚目よりも上だと思います。70年代然としたハードなギターリフに哀愁漂うツイン・リード、ハード・ドライヴィングな曲からメロウなバラードまで内容は変化に富み楽しいアルバムです。たぶん、日本盤は発売されなかったのではないでしょうか?福岡の輸入レコード屋で発見したのが76年の暮だったような記憶があります。日本盤を探しましたがなかった記憶があり、視聴も出来ず一種の賭けともいえる大博打(お金がなかった)でした。ジャケットは70年代前半風ですが、発売が75年と記されており、店主の言う「なかなかかっこいいよ」という言葉を信じての一点買いでした。 アルバムは、ハードなギター・リフを前面に押し出したハード・ロックで始まります。これを聴いた途端に馬券が的中したことを確信しました。メンバーの演奏力もさすがですが、いかにもハード・ロックというシャウトするヴォーカルに脱帽です。とにかく名曲です。2曲目は、アコギに導かれ始まる伸びのあるギターとヴォーカルが美しいスローナンバー。ツイン・ギターの美しさに哀愁感漂うメロディ、買ってよかった。3曲目は、ハード・ドライヴィングな作品。伸びのあるヴォーカルにタイトなドラム、しっかり支えるベース、縦横無尽に走り回るギターたち、どちらかというとUSハード・ロックのようです。4曲目は、ツイン・リード・ギターを効果的に使ったスロー・ナンバー。哀愁感漂う湿り気のあるブリティッシュ然とした作品です。5曲目は、へヴィでダークなミディアムテンポの部分とスピーディな部分とが交互に現れるブルース色の濃い作品です。6曲目は、ピアノも加わりブギ・ウギ風にアレンジされたハード・ドライヴィングな作品。しっかりとリズムをキープするバック陣の前でうねるギター、気分爽快です。7曲目は、牧歌的な雰囲気が美しいフォーク・ロック調の作品。8曲目は、女性コーラスとハモンド・オルガンが加わったファンキーな作品。UKのバンドの割にはUSっぽい作品が多いのは時代のせいでしょうか?9曲目は、ブルース色の強いへヴィでありながらもいぶし銀のような光を放つツイン・ギターにツイン・ヴォーカルが決まっている作品です。最後の曲は、チキン・シャック出身らしい遊び心溢れるデイズリー作のブルース。スタジオジャム風な作品で終わったのには何か訳があるのだろうか?本人たちは楽しそうだけど。 デビュー作の印象は、時代は産業ロックに突入しようかという時期だっただけにアメリカ・ナイズされた感じが無きにしも非ずですが、適度な湿り気を残したブリティッシュ・ロックは評価が低いように思います。ゲスト参加のボブ・テンチとズート・マネーがどの曲にどのように参加しているかは定かではありませんが、力強い援軍であったことは確かなようです。 ![]() 彼らは、この2作目を発表後に解散してしまいます。商業的にうまくいかなかったというのが一番の理由でしょうが、世の中はAOR、ディスコ、産業ロック、そしてパンクの台頭など昔のロックへの風当たりは強くなる一方、解散も当然の流れだったのでしょう。 ![]() そんな彼らのコンピレーションアルバムが、『Straight Faced Fighters』として発売されました。数曲を除き2枚のアルバムからの作品とライヴ作品(ラジオ用らしい)を3曲加えた全22曲の2DISKのアルバムです。私はまだ買っていませんが、そのうちにと思っています。 |