WEEKLY PICKUP  076 SEALS & CROFTS
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
SUMMER BREEZE (1972)


  1. Hummingbird
  2. Funny Little Man
  3. Say
  4. Summer Breeze
  5. East of Ginger Trees
  6. Fiddle in the Sky
  7. The Boy Down the Road
  8. The Euphrates
  9. Advance Guards
  10. Yellow Dirt
  • Jim Seals (g,fiddle,sax,vo)
  • Dash Crofts (g,mand,key,vo)
  • Red Rhodes (steel-g)
  • John Hartford (banjo)
  • John Ford Coley (p,b-vo)
  • Larry Knechtel (p)
  • Clarence McDonald (p)
  • Michael Omartian (p)
  • Harvey Brooks (b)
  • Wilton Felder (b)
  • Joe Osborne (b)
  • Louie Shelton (b,g,b-vo)
  • Jim Gordon (ds)
  • John Guerin (ds)
  • Jim Keltner (ds)
  • Russ Kunkel (ds)
  • Milt Holland (per)
  • Jim Horn (fl)


  • Produced by LOUIE SHELTON
 今回ご紹介するアルバムは、私にとっては奇妙な縁のある作品なのです。アナログ盤を手に入れたのは、発売から2年後。CDを手に入れたのも発売から数年が経過したときでした。どちらも中古レコード屋での購入だったのですが、両方ともに見本盤なのです。見本盤自体はそう珍しいものではありませんが、アナログとCDの両方が見本盤というのは私の所有するものの中でも他にありません。

 『S&GからS&Cへ』、正確には忘れましたが、サイモン&ガーファンクルを継ぐのはシールズ&クロフツだ!という意味のキャッチフレーズだったと記憶しています。日本では、1972年にブレークした彼らですが、その活動暦は意外に長く輝かしい足跡を残しているのです。

ドラマーであり歌手として活動していたダッシュ・クロフツとバイオリンでテキサス州で優勝したことのあるジム・シールズ(クロフツのひとつ年下)は、お互いテキサス州の出身で中学のときに出会い意気投合します。1958年、その年に『テキーラ』をヒットさせたインストゥルメンタル・ナンバーを得意にしていたチャンプスに加入します。十代での加入ですから、当時から演奏の腕前は相当のものだったんでしょうね。65年にチャンプスが解散し(ジムはその前年に脱退)、二人はグレン・キャンベルやリッキー・ネルソンなどの大物のバックを勤めながら作曲活動を続けます。

そして、1969年からデュオとしての活動を始めますが、71年にワーナーに移籍後に大ブレイクすることになります。このデュオの作品の説明において必要不可欠なのが、二人が信じるバハイ教(イスラム教⇒バーブ教⇒バハイ教に発展)です。その普及活動と平行しての音楽活動であるため、どうしても宗教色が強いのではと思われがちですが、歌詞の中に経典からの引用のある作品もあるものの、普通の歌詞として十分楽しめるものです。ただ、イメージがそう感じさせるのか中近東の旋律によく似た感じの作品もあるのは確かです。

 アルバムは、このデュオの特徴が遺憾なく発揮された曲で幕を開けます。ゆったりとした大河の流れにも似た美しいメロディとコーラスがアコースティカルな始まりをしますが、途中からややアップテンポになり中近東風のドラマティックな展開になります。続く2曲目は、やさしさに満ち溢れた作品です。アコースティック・ギターとマンドリンの響きに素晴らしいコーラスがマッチし上品な癒しの空間を創り出してくれます。3曲目は、2曲目からは一転しアップテンポでタイトなロック調の作品です。けして重くならないドラムスとソフトなベースが耳に心地よい作品です。 4曲目は、日本でも大ヒットしS&Cを一躍有名にした作品です。美しいメロディとコーラスによるソフト・ロックですが、さまざまなアレンジがなされていてギターやピアノの音が印象に残ります。5曲目は、哀愁たっぷりのアコースティカルな美しい作品です。とくに間奏のアコギとマンドリンが印象的です。イメージの異なる歌の部分と演奏の部分が組み合わされたS&Cならではといえる曲です。

 6曲目からが、アナログではB面になります。彼ら流のタイトでメロディアスなカントリー・ロックといったところです。曲名のとおりにジム・シールズのフィドルが大活躍する軽快な作品に仕上がっています。7曲目は、彼らの演奏の実力が最大限に生かされた作品です。スティール・ギターの伸びやかな音色が印象的でクロフツのマンドリンも大活躍するカントリー・バラード風に仕上がっています。8曲目は、都会的なジム・シールズのサックスの導入などジャズのテイストを織り込んだこれまでの作品とはイメージの異なるミディアム・テンポのソフト・ロック・ナンバーです。9曲目は、PPMやリンダ・ロンシュタットが歌ってもおかしくないようなカントリー・フォーク調の作品です。優しさが沁みる美しい作品です。10曲目は、都会的なハイ・センスな作品です。どことなく歌声がポール・サイモンに似過ぎているのではと、苦笑いしてしまいますが、ポール・サイモンの作品ではなく彼らのオリジナル作品です。

すばらしいコーラスにうっとりするデュオですが、演奏技術にも注目してほしいと思っています。

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