WEEKLY PICKUP 074 CURVED AIR |
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています |
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CURVED AIR, COLIN CALDWELL |
今回は、ワーナー・ブラザーズ・レコード50周年企画との勝手な連動企画(オーバーかな)として70年代初頭のロックの中でもユニークな存在だったカーヴド・エアをご紹介します。カーヴド・エアといえば、その後の活躍ということからエレクトリック・バイオリンを駆使するダリル・ウェイということになりますが、不思議な雰囲気を持った女性ヴォーカリストのソーニャ・クリスティーナや現代音楽にも造詣の深かったギターとシンセサイザー担当のフランシス・モンクマンなどのミスマッチとも思えるメンバーによる融合にこそ最大の魅力を感じるのです。クラシックとロック、フォーク、現代音楽のフュージョンは、当時のロックでは他に類を見ない試みとして評価されるべきだと思っています。 カーヴド・エアの前身は、ソーニャとイアン以外のメンバーがシシファスというグループとして活動を始めたのが始まりですが、マネージャーにより女性ヴォーカリストを加入させたほうが良いということでミュージカル『ヘアー』のクリッシー役を演じていたソーニャが加入します。当時は、ソーニャが有名だったため話題になり英国のバンドとしては初めてワーナー・ブラザースと契約します。日本でも、ワーナー・パイオニアが相当力を入れてプロモーションをしたのでしょう、中学一年生だった私でさえも知っているバンドのひとつだったのです。そして、1970年11月にレコード面にジャケットのイラストを印刷したピクチャー・ディスクでデビューを飾ったのです。この作品は、英国で8位まで上昇し、71年3月からはジェスロ・タルやEL&Pのサポートアクトとしてアメリカ公演も始まります。 順風満帆の中、ベーシストの交代はあったもののVCSシンセサイザーを手に入れたモンクマンに独自のエレクトリック・ヴァイオリンを奏で始めたウェイは次作の録音を開始します。それが、今回ご紹介する『セカンド・アルバム』です。デビュー作は、消して悪い出来ではないものの過激さが目立つ実験的なサウンドでした。その過激さの要因でもあったモンクマンのギターの活躍がこの作品では少なくなり、シンセサイザーをはじめとした多様なキーボードの使用やホーンの導入などアレンジ面での進歩が窺えます。 さて、アルバムはバンドの実力を遺憾なく発揮した曲から始まります。ウェイによる美しいバイオリンの旋律に無機質なシンセサイザーをはじめとした多様なキーボードとの合体、隠し味的に使用されているホーンなど変化にとんだ演奏が楽しめます。2曲目は、アルバムに先行して発表され英国で4位になった作品です。スローとアップ・テンポの切り替えをうまく利用した起伏に富んだ曲作りがなされ、モンクマンのキーボード群が大活躍します。3曲目は、ウェイのヴァイオリンを中心にしたストリングスとソーニャのヴォーカルによるクラシカルで透明感のある美しい作品です。チェロによる低音部の安らぎ感にも注目です。4曲目は、アップ・テンポのロック・ナンバーでモンクマンのギターが活躍するハードな作品です。アナログではA面最後の曲となる5曲目は、ソーニャのアンニュイな歌声が魅力的な作品です。始まりの不思議なパーカッションが何を意味しているのか今でも理解できません。A面の作品は、すべてウェイが中心になって作られた作品です。 B面は、すべてモンクマンによるもので、その最初の作品である6曲目は、、けして声量が豊かとはいえないソーニャがめずらしくタイトな歌声を披露し、ウェイのハードなエレクトリック・バイオリンが大活躍するジャズ・ロック的な作品です。それを支えているミクサーのドラミングにも注目ですよ。7曲目は、ハードなギターとバイオリン、アンニュイなソーニャのヴォーカルが、けだるい午後を思わせる作品です。そして、メインの作品である8曲目は、雰囲気の異なるいくつかのパートを多種多様の楽器が錦のように織り成す世界を堪能できる素晴らしい作品です。その13分あまりの間で繰り広げられる摩訶不思議な世界のダイナミックな展開やドラマチックな構成、美しさには脱帽です。 A面とB面で中心となった作曲者が異なっているとはいえ、ひとつの作品としてのまとまりは前作にはなかったものです。三作目が彼等の代表作として紹介されることが多いのですが、ファンタジックな三作目に対し、緊張感とスリリングな展開という点ではこちらが数段ロックしているという感じです。 |