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WEEKLY PICKUP  069 KING CRIMSON
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
IN THE WAKE OF POSEIDON (1970)


  1. PEACE - A BEGINNING
  2. PICTURES OF A CITY
    incliding
    42nd at Treadmill
  3. CADENCE AND CASCADE
  4. IN THE WAKE OF POSEIDON
    including
    Libra's Theme
  5. PEACE - A THEME
  6. CAT FOOD
  7. THE DEVIL'S TRIANGLE
    (ⅰ)MERDAY MORN
    (ⅱ)HAND OF SCEIRON
    (ⅲ)GARDEN OF WORM
  8. PEACE AN END
  • ROBERT FRIPP : GUITAR, MELLOTRON, DEVICES
  • GREG LAKE : VOCALS
  • PETER GILES : BASS
  • MICHAEL GILES : DRUMS
  • KEITH TIPPET : PIANO
  • MEL COLLINS : SAXES, FLUTE
  • GORDON HASKELL : VOCAL③
  • PETER SINFIELD : WORDS
 大反響を巻き起こした『クリムゾン・キングの宮殿』の発表(1969年10月10日)後まもなくメンバーはアメリカ・ツアーに旅立ちます。しかし、10月29日から12月16日までの長期に亘るツアーは、メンバーの疲弊を生みます。とくにバンドの要であるI.マクドナルドとM.ジャイルズは、12月7日にバンドからの離脱をR.フリップに申し出ます。「私がバンドを去るから残ってくれ」というR.フリップの説得にもかかわらず二人はツアー終了後にバンドを去ってしまいます。コンポーザー、アレンジャーのみならずマルチ・プレーヤーとしてのI.マクドナルドと複雑でスピーディなリズムを正確にたたき出していたM.ジャイルズという二人の脱退は、これからのバンド活動に大きな衝撃を与えたに違いありません。

しかし、新しい年を迎えると残されたメンバーは新しいメンバー探しを始めます。まず、ドラムスに元ジェイコブズ・ラダーのアンドリュー・マクロークとサックス、フルート奏者に元サーカスのメル・コリンズが決定。サーカスは、出演の曜日は違うもののマーキー・クラブで活動をしていたバンドであったため熟知の中だったみたいですが、当時M.コリンズはI.マクドナルドに対してライバル意識があったそうです。彼を誘ったのはR.フリップとM.ジャイルズだったということなので、バンドを離れた後もM.ジャイルズは新メンバー獲得に協力していたんですねぇ。そして、重要な人物としてキース・ティペットが参加の要請を受けます。R.フリップはK.ティペットのジャズ組曲への協力をするなどお互いがそれぞれの音楽を理解し合っていたようです。このとき、セッション・ヴォーカリストとして契約したのがエルトン・ジョンだったというのは有名な話ですが、彼の貧相な声に幻滅を感じたR.フリップが契約を破棄してしまいます。

メンバーが揃い1970年の2月にはレコーディングが始まりますが、それぞれが完全にバンドから離れて参加しているわけではなくスケジュールの関係などで満足のいくレコーディングができなかったようです。そこで、既にバンドを離れマクドナルド&ジャイルズとしての準備を進めていたマイケル・ジャイルズ(ドラムス)とピーター・ジャイルズ(ベース)に参加の要請をします。その結果、G.レイクはヴォーカルのみに専念するということになりレコーディング終了後、EL&P結成へと向かいます。急場凌ぎともいえるメンバーでのセカンド・アルバムの本作が発表されたのは5月15日、そのまえに先行シングルとして「キャット・フード」が発売されています。

前作との共通点ばかりが強調され正当な評価をしてもらえない本作ですが、特に前半部の②③④は作品そのものから曲の流れも似通ったものとなっています。しかし、公式?の英国での順位は、前作のひとつ上の4位という結果だったのです。確かに前作の余韻がかなり影響しているとは思いますが、前作に勝るとも劣らない作品であるという評価の表れではないかと思います。G.レイクの序章に続く攻撃的な主題部とジャジーなインプロヴィゼーションで構成された②は前作の「21世紀の……」を彷彿とさせますが、M.コリンズやK.ティペットの影響でよりジャジーな作風に仕上がっています。「風に語りて」と比較されるフォーキーな③は、この曲にのみ参加している同郷のゴードン・ハスケル(フォーク系のシンガー・ソング・ライター)の優しい声とM.コリンズによる美しいフルートがフィーチャーされた牧歌的な作品です。この曲は、クレジットはないものの1969年にI.マクドナルドが作った曲が原曲になっており、その原曲は『マクドナルド&ジャイルズ』に収録されています。G.レイクのヴォーカルとR.フリップによるメロトロンが印象的なタイトル曲も「エピタフ」と比較される作品です。が、アレンジ面におけるR.フリップの成長を感じさせる作品にもなっているのは事実です。叙情的なメロディに加えアコースティック・ギターの使用など当時のキング・クリムゾンの根底にあったブリティッシュ・フォークの影響を感じさせる作品でもあります。

このアルバムの真骨頂ともいえるのが後半の2曲です。アルバムに先行してシングル・カットされた⑥は、ビートルズの「カム・トゥ・ゲザー」のパロディともビートルズへの挑戦とも受け取れる作品で、キング・クリムゾン的なポップスの解釈を具体化したものともいえるのではないでしょうか。とくに、K.ティペットのフリー・ジャズ的なアプローチが耳を奪います。ホルストの組曲『惑星』の中の「火星」をモチーフにした問題作(聴けばわかります。機械は壊れていません。)の⑦は、メロトロンの多重録音が緊張感を高め壮大な宇宙をイメージさせてくれます。この作品を聴くと、すでにメタル・クリムゾンの下地がすでに出来上がっていることが確かめられると思います。

前作の二番煎じ的な扱いを受ける本作品ですが、聴き比べてみると前作のほうが非常にポップであるということがわかります。ロックとジャズ、クラシックの融合という点においては前作を完全に上回っています。

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