WEEKLY PICKUP 
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BOB SEGER & THE SILVER BULLET BAND
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
AGAINST THE WIND (1980)


  1. Horizontal Bop
  2. You'll Accomp'ny Me
  3. Her Strut
  4. No Man's Land
  5. Long Twin Silver Line
  6. Against the Wind
  7. Good for Me
  8. Betty Lou's Gettin' Out Tonight
  9. Fire Lake
  10. Shinin' Brightly
  • Bob Seger : Guitar, Vocals
  • Drew Abbott : Guitar
  • Barry Beckett : Keyboards, Piano
  • Chris Campbell : Bass
  • Pete Carr : Guitar
  • Sam Clayton : Percussion
  • Dr. John : Keyboards
  • Glenn Frey : Guitar, Vocals
  • Paul Harris : Keyboards, Organ, Piano
  • Roger Hawkins -Drums, Percussion
  • Don Henley : Vocals
  • David Hood -Bass
  • Randy McCormick : Keyboards, Organ
  • Bill Payne : Multi Instruments
  • Alto Reed : Horn, Saxophone
  • Doug Riley : Synthesizer
1945年生まれですので今年で61歳でしょうか。そんなおじさんロッカーであるボブ・シーガーがなんと11年ぶりとなる新作『Face The Promise』(ビルボードのチャートで初登場4位を記録)を2006年9月に発表し健在振りを示しました。久しぶりの作品が初登場4位を記録するほどアメリカでは人気が高い彼ですが、日本ではさっぱり(ちょっと言い過ぎかな、ファンの方ごめんなさい)知名度がありません。同様なアーティストであるブルース・スプリングスティーンは知名度が高く人気もあるのに、不思議です。まぁB.スプリングスティーンほどのあくの強さやチョイ悪的な魅力には欠けるかもしれませんが、素晴らしいアーティストなのです。

私が彼を気に入っている点はどこかというと、意外と思われるかもしれませんが、聴き終わった後のさわやかさでしょうか。無骨な風貌やちょっとしわがれた声などの印象からは想像できないくらいのナイーヴな詩にメロディ、それとは逆にハードなアプローチをしたりとバラエティに富んだ作品が多いのです。

今回御紹介する作品は、その彼がのりまくっていた時期の作品でビルボードでナンバー1を獲得した作品でもあります。一曲ごとの出来の素晴らしさはもちろんですが、静と動、緩と急がバランスよく配置されたアルバムの構成の素晴らしさがたまりません。それに加えて、名も無き時代に音楽活動をともにしていたグレン・フライやルーツ・ロックの重鎮Dr.ジョンなど名前を聞いただけで涎が出てきそうなゲスト陣が脇を固めています。アルバムのジャケットの第一印象だとルーツ・ロック系もしくはカントリー・ロック系のアーティストかなとどなたでも思われると思います。基本的にはアメリカン・ロックのルーツであるカントリーやフォーク、ブルースを下地にしていますが、受ける印象は土の匂いがあまりするわけでもなく、どちらかというと都会的な感じがします。

さて、アルバムの冒頭は軽快なR&Rで始まります。リフで押し出す力強いギターにホンキートンク調のピアノ、それにからむサックスなど気分がパーッと明るくなります。2曲目はボブの温かみのある声が十分に堪能できるカントリー・ベースのウエスト・コースト風のソフトな作品です。オルガンの暖かい音が良い雰囲気を醸しだしています。3曲目は、いかにもデトロイト出身だなと思わせるハード・ロックです。ハード・ロック・バンドが取り上げてもおかしくないくらいの素晴らしい作品で、ヘヴィなギターリフがたまりませんよ。語り口調で歌われる4曲目も静かではありますが力強さを秘めた作品です。シンセサイザーによるストリングスが見事に雰囲気を盛り上げます。動と静が交互にやってくるので5曲目は動、しかも軽快なブギ・ロック調です。がんがん突っ走るのではなくメロディアスな部分を挟んでいるところがボブのセンスの良さでしょう。

6曲目は何度聴いたかわからない名曲です。メロディばかりではなく歌詞の内容も素敵です。読解力の無い私には十分には理解できませんが、芸術的な一級品です。風の流れにも似た憂いを秘めた美しいメロディが感情を高ぶらせますが、聴き終わりには妙に落ち着いているという不思議さもあります。 7曲目は、フォーク・ロック調の作品です。これもまた、ボブの歌声が堪能できます。続く8曲目はご機嫌なR&R。ボブとホーン・セクションの絡みが楽しめる作品で、ライヴ的な味付けがなされています。9曲目は、カントリー・タッチのリズムに乗せてほのぼのとしたボブの歌声が心地よい作品です。最後は、ボブの力強い歌声が印象に残るR&Bテイスト溢れる作品。

どの曲も素晴らしいアレンジがなされており、まさにアメリカン・ロックの集大成とも呼べる傑作です。70〜80年代のロックが見直されている現在、忘れてはいけないアーティストです。

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