WEEKLY PICKUP 063 KING CRIMSON |
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています |
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GUEST |
キング・クリムゾンの作品の中で何が一番好きですかと聞かれたら、迷わず『RED』と答えます。しかし、一番美しい作品は何だと思いますかという問いに対しては、『ISLAND』か『Starless And Bible Black』で迷ってしまいます。前者は希望に満ち満ちた宇宙の拡がりであり、後者は絶望に打ちひしがれた宇宙の収縮?という正反対の印象を受けるのです。希望に満ちた感じのする本作ですが、最も美しい最後のタイトル曲ではクリムゾンの終焉を暗示しているようにも思えたものでした。 めまぐるしくメンバーが交代するクリムゾンですが、今回も残留したのは(できたのは?)メル・コリンズ一人だけ。ピート・シンフィールドが参加した最後のスタジオ作品ということで有名な作品ですが、4作目にあたるこの作品はクリムゾンの作品の中で最もジャズ寄りの作品でもあります。前作の『Lizard』に参加したキース・ティペット・グループ(ロジャー・ディーンのジャケットで有名な『Dedicated To You, But You Weren't Listening 』もお薦め)がよっぽどお気に召したのか、R.フリップはメンバーの引き抜きまで画策しています。引き抜きは上手くいきませんでしたが、残留のメル・コリンズと新しいメンバーのボズ・バレル、イアン・ウォーレスを中心に製作を始めます。もちろんキース・ティペット・グループからK.ティペット(ピアノ)とマーク・チャリグ(コルネット)が参加。それにロビン・ミラー(オーボエ)、ハリー・ミラー(ダブル・ベース)という布陣で完成した作品は、クリムゾンの代名詞であるメロトロンやシンセサイザーではなく生のストリングスを使うなど自然の音にこだわった曲作りもなされています。 ジャケットそのものという感じの神秘的で東洋的な作品でアルバムは始まります。生ののストリングスを使いポーリナ・ルーカスのソプラノがフィーチャーされたピート・シンフィールドの世界観が広がっています。途切れずに始まる2曲目は、第三期クリムゾン(R.フリップ、B.ブラッフォード、J.ウェットン他)を彷彿とさせる作品です。エキセントリックなフリップのギターに絡むメロトロンやサックス、シンフィールドのアプローチとは一線を画す作品でもあります。『クリムゾン・キングの宮殿』を凝縮したような3曲目は、シンフィールドとフリップの共作でありながらシンフィールドの叙情的な面とフリップのアナーキーな面が融合することなく接合され展開していきます。ボズのヴォーカルも秀逸です。シンフィールドの詩や世界観を理解できないボズ、コリンズ、ウォーレスを痛烈に皮肉った4曲目。非常に珍しいクラシックの手法を取り入れた5曲目。荘厳な教会のハーモニウム(オルガン)が印象的な最後の曲は、ボズのヴォーカル、フルート、コルネット、オーボエの各メンバーのソロをフィーチャーしながら展開されていきます。 美しすぎるアルバムではありますが、フリップとシンフィールドの向かう方向が一緒ではないということを明確にさせた作品でもあります。そういう意味も含め名盤であり迷盤でもあります。これを最後にシンフィールドが去り、フリップはインプロヴィゼーションを主体とした方向に向かうのです。 ![]() |