WEEKLY PICKUP 057 PAVLOV'S DOG
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
PAMPERED MENIAL(1975)


  1. JULIA
  2. LATE NOVEMBER
  3. SONG DANCE
  4. FAST GUN
  5. NATCHEZ TRACE
  6. THEME FROM SUBWAY SUE
  7. EPISODE
  8. PRELUDIN
  9. OF ONCE AND FUTURE KINGS
  • DAVID SURKAMP : VOCALS, GUITAR
  • RICK STOCKTON : BASS
  • MIKE SAFRON : DRUMS PERCUSSION
  • DAVID HAMILTON : KEYBOARDS
  • STEVE SCORFINA : GUITARS
  • DOUG RAYBURN : MELLOTRON, FLUTE
  • SIEGFRIED CARVER : VIOLIN, VITAR, VIOLA
アメリカン・プログレッシヴ・ロック・バンドのパブロフズ・ドッグのデビュー作品です。1975年発売ですが、日本ではセカンドとともに発売になった作品でもあります。その発売のきっかけとなったのがビル・ブラッフォードのセカンド・アルバムへの参加だったのです。1975年といえばプログレッシヴ・ロックが頂点を迎えようとしているとき、無名の新人の作品には発売のチャンスが回らなかったのも納得できるような気もします。しかし、当時から話題にはなっていたらしく、セカンドに参加したビルのお蔭でレコード会社も発売に踏み切ったようです。

さて、アメリカのプログレッシヴ・ロックというと大仰で幾重にも重なった分厚い音を想像されると思います。しかし、このグループは楽器の編成からも想像できるようにクラシカルでどちらかというとブリティッシュ・プログレッシヴに近い曲が多いのです。そう感じるのはメロトロンやヴァイオリンなどの管楽器の使用に負うところが大きいと思います。繊細な部分はイタリアのプログレッシヴ・ロック・バンドのPFMなどにも近い気がしますが、アメリカのバンドならではの特徴も兼ね備えているのです。

それは、このバンドの最大の特徴とも言えることなのですが、プログレ・バンドでありながら長尺の曲はなく4分前後の曲でアルバムが構成されているという点なのです。しかもキャッチーなメロディのヴォーカルを中心に曲が展開され、その短い間に曲調を何度も変化させたりと飽きのこない構成がなされているのです。各メンバーの演奏力の高さもさることながら、楽器の一部に聞こえてしまうデヴィッド・サーカンプのハイトーンのヴォーカルが何回も聴いているうちに心地よく感じられてきます。アルバムの冒頭の美しい曲「ジュリア」を聴いたらびっくりすること間違いなしです。

その「ジュリア」でアルバムは幕を開けるのですが、私的には名曲と思っている作品なのです。題名からも予想されるようにラヴ・バラードなのですが、単なるバラードにあらず。ロマンティックなメロディー・ラインにメロトロンの味付けが強烈で強く印象に残る作品です。それに加えてジャジーな味付けもあってバンドとしてのレベルの高さをうかがわせてくれます。2曲目は、ギターとオルガンをフィーチャーした作品でここでもメロトロンが活躍しています。切れのあるリズムとアコースティック・ギターの美しい響きに酔いしれているようなヴォーカル、2曲目で彼らの世界の虜になるのは間違いありません。3曲目は構成が面白い作品です。シンフォニックに始まったかと思うとハード・ロック的なアプローチのリフが飛び出し度肝を抜きます。ハードな展開の中にもいい味を出しているバイオリン、聴き応え十分の作品です。4曲目はバンド・アンサンブルが楽しめる作品です。どことなく東洋的な雰囲気が漂うシンフォニックな作品。5曲目は、R&R。ホンキートンク風のピアノも素敵ですが、ギターとオルガンの絡みや絶妙のコーラスなど短い中にも凝った作りがなされています。6曲目は、ムード満点のバラード。7曲目は、このバンドの基礎をうかがわせる作品で、ヴィオラを中心に哀愁ある作品に仕上がっています。 8曲目は、9曲目への入り口的役割のシンフォニックなインストの小作品。最後は5分半に及ぶ作品で、もっと聴きたいのに短いなぁという思いがやっと満足させられる作品です。どちらかというとイタリアン・プログレッシヴのよう、緩やかに始まりアップテンポの中間、そしてまた緩やかな展開という作品です。メロトロンを中心にピアノ、ギターが大活躍、フィナーレにふさわしい作品です。

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