WEEKLY PICKUP  044 ERIC CLAPTON
WEEKLY PICKUPは、70年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています
There's One in Every Crowd (1975)


  1. WE'VE BEEN TOLD(JESUS COMING SOON)
  2. SWING LOW SWEET CHARIOT
  3. LITTLE RACHEL
  4. DON'T BLAME ME
  5. THE SKY IS CRYING
  6. SINGIN' THE BLUES
  7. BETTER MAKE IT THROUGH TODAY
  8. PRETTY BLUE EYES
  9. HIGH
  10. OPPOSITE
  • ERIC CLAPTON : GUITAR, VOCAL
  • GEORGE TERRY : GUITAR
  • CARL RADLE : BASS
  • JAMIE OLDAKER : DRUMS
  • DICK SIMS : ORGAN
  • ALBHY GALUTEN : KEYBOARDS
  • YVONNE ELLIMAN : VOCAL
PRODUCE : TOM DOWD
復活を遂げたクラプトンの通算3枚目のソロアルバムです。大傑作といわれる前作『461オーシャン・ブールバード』の陰に隠れてなかなかスポットライトがあたりませんが、こちらも名盤なのです。前作は、クラプトンのギターやブルース色も少し控えめな感じでしたが、この作品ではブルース色を上手くレゲエに取り入れていてギターもかなり活躍しています。

今回は、マイアミに加えてジャマイカでの録音も加わっているため前作よりもレゲエ色が強くなり、さらにリラックスしたムードが伝わってきます。「アイ・ショット・ザ・シェリフ」に対するアンサーソングも収録するなどボブ・マーレイを中心とするレゲエに対して感謝の意を表しています。

しかし、レゲエ一色というわけではなくブルースからロックまでがバランス良くかみ合っており名曲と呼ぶに相応しい作品も少なくないのです。全体としては(ジャケットも含め)地味な印象は拭えませんが、聴けば聴くほど味が出てくる楽曲群なのです。

美しいアコースティック・ギターに導かれて始まるゴスペルのカヴァー・ソングでアルバムは始まります。入りとしては若干地味に思われるかもしれませんが、クラプトンの素敵なスライド・ギターも聴くことができ次への期待感を膨らませるには十分な出来上がりです。2曲目も宗教歌のカヴァーですが、こちらは完全にレゲエにアレンジされており、まったくのオリジナルといっても過言ではありません。3曲目は、スワンプ・ロックの中心だったシェルター・レコード(レオン・ラッセル)のジム・バイフィールドの作品のカヴァー。さりげないツイン・ギターでサザン・ロックっぽさを演出している粋な作品です。4曲目は、「アイ・ショット・ザ・シェリフ」に対するアンサーソングでボブ・マーレイにささげられた作品です。声を押し殺したようなクラプトンの声がなんともいえない魅力です。5曲目は、エルモア・ジェイムスとモーガン・ロビンソンのブルース・ナンバーのカヴァーです。感想でのクラプトンのソロには思わず「待ってました!」と声をかけたくなってしまいます。

6曲目は、シェルター・レコードの女性歌手メリー・マックリアリーの作品。シェルター関係の曲を2曲も収録するなんてレオン・ラッセルなどと活動した時期を大切にしているんでしょうね。曲のほうは、レゲエ調の軽快なリズムをバックにR&B的な南部色豊かなロックを展開していますし、クラプトンの力強いギターが聴けるのもうれしい限りです。7曲目は、クラプトン作のスローなブルース・ナンバー。ちょっぴりジャジーでクールなクラプトンも魅力的ですよ。8曲目は、アコースティックとエレキ・ギターによる対比的な曲構成が面白い作品で、軽快なリズムにのった美しいメロディの作品です。9曲目もクラプトンのギターが楽しめるロック色の強いポップな作品です。 最後もツイン・ギターによる美しい演奏が印象的な作品です。温かみのあるメロディが、川の流れのようなゆったりした時を感じさせてくれます。

前作でもそうでしたが、ジョージ・テリー(G)との相性もばっちりで、素晴らしいバンド・アンサンブルを聴かせてくれます。コンポーザー、シンガーとしての力量も格段に上がっています。