SUZI QUATRO（70年代ロック名盤、ブリティッシュ・ロック）

WEEKLY PICKUP　 042 SUZI QUATRO

WEEKLY PICKUPは、７０年代を中心にしたロックの埋もれそうな名盤・迷盤を紹介しています

SUZI QUATRO (1973)

48 CRASH
GLYCERINE QUEEN
SHINE MY MACHINE
OFFICIAL SUBURBIAN SUPERMAN
I WANNA BE YOUR MAN
PRIMITIVE LOVE
CAN THE CAN
ALL SHOCK UP
STICKS AND STONES
SKIN TIGHT SKIN
GET BACK MAMMA
ROCKIN' MOONBEAM
SHAKIN' ALL OVER

SUZI QUATRO : BASE, LEAD VOCAL
LEN TUCKEY : GUITAR, SLIDE GUITAR
ALASTAIR McKENZIE : KEYBOARDS
DAVE NEAL : DRUMS

PRODUCE : MIKE CHAPMAN, NICKY CHINN

サディスティック・ロックの女王という形容詞で呼ばれたスージー・クアトロのデビュー作です。『ミュージック・ライフ』などに掲載されたぴちぴちの革ジャンにジーパン姿の写真が思春期の私たちを十二分に刺激してくれました。その後、体の中央を縦に走るジッパーのついた皮のツナギ（胸の中央まで開いていた）になって、またまた刺激度がアップしたのです。

アメリカ、デトロイト生まれのスージーは、セミプロのミュージシャンだった父親の薦めも会って１９６４年に姉妹４人（スージーは末娘）でグループを結成しデトロイトを中心に活動を始めます。その後紆余曲折を経て、１９６９年にスージーのライヴを観ていたイギリスの大物プロデューサー・ミッキー・モストの目に留まります。しかし、ロンドンに渡ったもののレコード・デビューは１９７２年。セールス的にも振るわず諦めかけていたところ、ミッキー・モストがスージーにぴったりの曲を持ってきます。それが、このアルバムにも収録されている「キャン・ザ・キャン」だったのです。その曲の作者は、数々のヒット曲を発表し当時のグラム・ロックの陰の立役者だったマイク・チャプマンとニッキー・チンのコンビだったのです。５月に発売されたこの曲は、６月中旬に見事ナンバー・ワンに輝き、続いて発売された「４８クラッシュ」も第３位を獲得しスージーは一躍スターダムに。この２曲は、日本でも大ヒット、ルックスの良さも手伝って、男ばかりだったロック界に紅一点としてスージー・クワトロの名前が残ることになるのです。

私も、さっそく友達のアルバムを借りて録音。姉御の色っぽさに酔いしれようとしたのです。しかし、聴いてみてびっくり！スージー・クワトロというソロ的なグループかと思っていたのは大間違い。しっかりバンドとしてアンサンブルしているではないですか。とくに、キーボードの使い方などにはセンスが溢れていて、色っぽさを求めた私の下心は、完膚なきまでに叩きのめされたのです。

前述の２曲のほかに⑥（アナログではＡ面最後の曲）もチャプマン＆チンの作品ですが、①と⑦が力強いギターリフを中心にしてスージーのシャウトするヴォーカルが魅力的なＲ＆Ｒ（グラムっぽく仕上げられています）であるのに対し、⑥は、ため息混じりに語るように歌う艶っぽいスージーの魅力が発揮された異色な曲です。後半部でのエレクトリック・ピアノによる幻想的な構成もスージーの魅力に拍車を駆けています。カヴァー・ソングも３曲含まれていて、ビートルズのリンゴ・スターが歌った⑤では、まったりしたオリジナルをワイルドなＲ＆Ｒに仕上げています。Ｒ＆Ｒのスタンダードでエルヴィス・プレスリーのナンバー・ワン・ソングの⑧ではオーソドックスに、ゲス・フー（カナダのハード・ロック・グループ）の⑬では、ハードに迫っています。⑬は、スージーの声が細いためハード・ロックと呼ぶには難がありますが、バンドの演奏がしっかりしていて聴き応えはあります。

さて、注目はスージーとタッキーの協作の②、③、④、⑨、⑩、⑫とスージー単独の⑪です。②は、①からインスピレーションをもらったと思えるようなグラム・ロックで、Ｔ.ＲＥＸ風の仕上がりになっています。ポップでライトな③、ちょっとブルージーに迫るハードな④、⑧の後ということなのかスタンダードなオールド・スタイルのＲ＆Ｒの⑨、けだるい雰囲気のスージーの声とメロトロンの効果で妙な都会的センスが光る⑩、元気いっぱいのハードなＲ＆Ｒの⑪、ホンキー・トンク調のピアノが楽しいブギ・ロックの⑫と、さまざまな雰囲気のオリジナルによってアルバムの価値は数段上がっていると思います。

スージー・クワトロばかりが前面に出て楽曲の魅力が語られることは少ないですが、間違いなく楽しめる作品ですし、隠れた名盤なのです。

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