ROCK STANDARD  069 GRAND FUNK
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています
WE'RE AN AMERICAN BAND (1973)



  1. We're an American Band(Brewer)
  2. Stop Lookin' Back(Brewer/Farner)
  3. Creepin'(Farner)
  4. Black Licorice(Brewer/Farner)
  5. The Railroad(Farner)
  6. Ain't Got Nobody(Brewer/Farner)
  7. Walk Like a Man(Brewer/Farner)
  8. Loneliest Rider(Farner)
  • MARK FARNER : guitar, vocals
  • DON BREWER : drums, vocals
  • MEL SCHACHER : bass
  • CRAIG FROST : keyboards
PRODUCER : TODD RANDGREN
 1969年のデビュー以来71年までにライヴ作品を含めて6作というハイ・ペースで作品を発表してきたGFRでしたが、マネージャー兼プロデューサーでもあったテリー・ナイトとの間にギャランティ問題が発生します。それは、レコード会社をも巻き込んだ泥沼の訴訟合戦に発展し、しばらく活動休止を余儀なくされます。結果は、敗訴ということになりましたが、心機一転72年に発表した前作のセルフプロデュース作品『PHOENIX』は、彼らに良い意味での音楽的な転換をもたらしました。その転換をファンも暖かく迎え入れ全米7位でゴールド・ディスクを獲得します。商業的にもまずまず成功した彼らは、この後第二期黄金時代を迎えるのです。

 その音楽的な転換に大きな役割を果したのが、本作より正式メンバーとしてクレジットされているクレイグ・フロストなのです。クレイグは、67年にドン・ブリューワーが結成したザ・ファビュラス・パックというバンドの一員だった人で、その後ジャズ・バンドで活躍していたそうです。前作の都会的でポップな感覚とインプロヴィゼーションの素晴らしさも納得というところです。

 そして、最重要人物なのが、プロデューサーのトッド・ラングレンです。自身のバンドであったナッズを解散させアルバート・グロスマンの招きによりウッドストックへ移住、ベアズビル・レコードでハウス・エンジニア、プロデューサーとして活動していました。奇才(鬼才が適切?)と呼ばれるトッドは、プロデューサーとしてでグレイト・スペックルドバードやアメリカン・ドリームのデビュー・アルバムを手がけ、ザ・バンドの『ステージ・フライト』の製作にもエンジニアとして参加しています。このルーツ・ミュージックを中心としたトッドの経験が、それまでブリティッシュ・ロックに対抗心を燃やしてきたGFRにアメリカを意識させるキッカケになったのは言うまでもないでしょう。それに加えてトッドの持つポップセンスが加味され、極上のアメリカン・ハード・ロックが誕生したのです。

 さらに、もうひとり。これまではマーク・ファーナーがほとんどの曲を手がけてきましたが、本作ではドン・ブリューワーの参加が目立っています。全8曲中5曲に参加していますし、オープニングの「アメリカン・バンド」は単独の作品であり、リード・ヴォーカルも担当しています。これまでは、マーク・ファーナーのワンマン・バンド的な感じがしていましたが、前作からはバンド・アンサンブル的な方向性が見え始め、本作で完成したといっても過言ではないでしょう。

 説明の必要のない1曲目は、当時の素人バンドにとっては必ずコピーしたのではないかと思えるほど影響力のあった作品です。とくに、ドラムの担当者にとっては目立つチャンスであるとともに女性に持てるためにはぜひ学園祭で演奏したい作品でもあったのです。あくまでもシンプルに、ストレートに、ハードに、そしてポップにと未だに色褪せないアメリカン・ハード・ロックの名曲です。

ファンキーなギターとクラヴィネットが小気味良い2曲目。ソウルフル味付けされたサウンドは、まさにアメリカのバンドならではです。サビの美しいメロディも印象的です。メル・サッチャーの重たくキレのあるベースが印象的な3曲目は、スロー・テンポのバラードです。マーク・ファーナーのお得意ともいえる美しいメロディも素晴らしいのですが、7分にも及ぶ作品とは思えない聴き手を引き付けるバンド・アンサンブルに注目の作品です。ハイ・テンポのハードな4曲目は、ギターの音色にも工夫が凝らされたメリハリのある作品で、久々のマークの叫びが心地よい作品です。

 B面最初の曲は、ロック・バラードの名曲です。これから自分たちが突き進む道を示すようなタイトルも秀逸ですが、自信に満ち溢れたマークのヴォーカルやメンバーの演奏には、ただ、ただ、涙なのです。6曲目は、ソウル・フィーリング溢れるコーラスを導入しポップなロックン・ロールに仕上がっています。6曲目と同じくポップでソウルフルな味付けの7曲目は、ブルース系の王道ハード・ロックを基調にしてグランド・ファンクの力強さが表現されています。最後は、バンド・アンサンブルを十二分に楽しめる作品になっています。伸びやかなマークのギターもフィーチャーされ他のメンバーとの絡みも最高です。

この作品から、彼らはバンド名をグランド・ファンクに改めています。争ったテリー・ナイトがバンド名の権利を有していたためですが、そのことがバンドに新しい息吹を吹き込み心機一転の素晴らしい作品を私たちに残してくれたのでしょう。

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