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ROCK STANDARD 054 VAN MORRISON |
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています |
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EXECUTIVE PRODUCER : LEWIS MERENSTEIN |
はじめてこの作品を聴いたのは友達の部屋でした。まだまだお子ちゃまだった私や友達がこんなセンスの良い作品を所有しているはずもなく、友達の4つ年上の兄弟の所有していたものを聴かせて貰ったのでした。しかし、それほどの印象が残ったわけでもなく金銭的に余裕があるわけではありません。結局、私がこの作品を手に入れたのは高校生になってからだったと記憶しています。 大学生になっていた友達の兄弟が夏休みに帰省していたとき、新しいレコードを買ったから古いほうをあげるといってくれたんです。せっかく貰ったんだからと何度か聴いていくうちにセンスの良さや落ち着き感がたまらなく好きになっていたんです。ドップリ聴いてもいいし、さらっとBGMとして聴いても邪魔にならないし、不思議な作品です。 ビートバンドとして人気のあったゼムをヴァンが脱退したのが66年、ソロ・アーティストとしてスタートしシングルも好調にヒットした矢先にパートナーだったバート・バーンズが67年に急逝します。しかし、災い転じて福となるではありませんが、気持ちの整理をしアメリカのワーナー・ブラザーズと契約をします。もともと、アメリカでの人気も絶大だった彼は、アメリカ各地を転々としながらアメリカの音楽を吸収していきます。そして、70年に発表された本作を挟んだ『アストラル・ウィークス(1968)』と『ヒズ・バンド・アンド・ストリート・クワイア(1970)』で初期の頂点を迎えるのです。 この作品は非常にアメリカ的(そのものかも)ではあります。が、同時期にアメリカへ移りレイド・バックした作品を発表していたE.クラプトンの『レイラ』やD.メイスンの『アローン・ツゲザー』で彼らが目指した原点回帰的な方向性とは違っていると思います。自身の幼年時代に影響を受けたジャズやソウルなどを再確認し現在の自分が飲み込み消化することで新しいスタイルを表現するという前進的な感じがします。オーソドックスといえばオーソドックスなのですが、そこにアイリッシュとしての独特の匂いを感じ摂ることもできると思います。 ジャズ的で実験的でもあった前作の流れを汲みながらも、よりソウルフルなヴォーカルを聴かせてくれる本作は、まったりとしたカントリー・ロック調の作品で始まります。ホーン・セクションの導入やジャジーなピアノなどが絡み味わい深い作品に仕上がっています。2曲目は、ジャズをベースに展開される作品で彼のセンスが光る名曲です。演奏の素晴らしさもさることながらヴォーカリストとしてのヴァンの力量が楽しめる作品です。3曲目も名曲中の名曲、多くのアーティストにカヴァーされていますので、若い方でも必ずどこかで聴いたことがあると思いますよ。2分35秒という短めの作品ですが、心に染み渡る美しいメロディは一度聴いたら忘れられません。ソウルフルなヴォーカルが堪能できる4曲目、やさしく歌いかけてくれる5曲目はAOR的な作品です。アコギをベースとしながらもオルガンやサックスの効果的な使い方がたまりません。 カントリーのリズムをベースにホーンセクションが小粋に絡むキレの良い6曲目。R&B、カントリーなどアメリカのルーツが集合し気負いのないリラックスした雰囲気の7曲目。女性コーラスをバックにソウルフルな歌声を聴かせてくれる8曲目は、静かな夜にバーボンでも傾けたくなる作品です。クラシカルなクラヴィネットやフルートが活躍する9曲目は、ロック的なアプローチながら中世風のメロディがユニークな作品です。フォーカスとヴァンのドッキングとでも言ったほうがわかりやすいかもしれません。ベースとクラッピングをバックに始まる最後の曲は、カリプソ的なリズムやサックスが爽やかな作品です。 他のアーティストの評価は高いものの、一般人には変人扱いされているヴァンですが、この時期の作品は文句なく楽しめる作品ばかりです。とくに、これから大人へ向かわれる方には是非聴いてほしい作品です。 |