ROCK STANDARD 044 BLUE ÖYSTER CULT |
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています |
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アメリカン・ヘヴィ・メタルの元祖とも言われるブルー・オイスター・カルトのデビュー・アルバムです。このアルバムは出来のよさとは裏腹に、日本に紹介されたのは発売から3年も経った1975年だったのです。ヘヴィ・メタルの元祖といっても今の感じとはちょっと違っています。当時の70年代初期のロック・バンドが試みていたように、アメリカのバンドなので根底にはブルースやR&Bからカントリーがあり、それらの幅広い音楽の要素を巧みに取り入れています。全体の印象としては、ヘヴィなのですがとてもクールな印象です。しかも、アメリカのバンドらしくキャッチーなメロディも備えていたり、曲の中で曲調が変化したりと聴き手を飽きさせない工夫が楽しい作品でもあります。 ブルー・オイスター・カルトは、1967年にニューヨークの大学生で結成されたバンドです。自主的というのではなく音楽評論家のリチャード・メルツァーが自身の考えを実現させるために結集させたバンドなのです。SOFT WHITE UNDERBELLY(やわらかな下腹部)という名前でスタートしますが、ワハカ、ストーク・フォレスト・グループと名前を替えていき、最終的にブルー・オイスター・カルトとしてデビューに至ったのです。そのせいか、このアルバムもバンドの意思とは関係なく?アリス・クーパーやブラック・サバスを意識したような曲も見受けられます。 印象的なギターフレーズとベースラインのアップテンポの名曲でアルバムは始まります。ギター、ベースに絡むオルガンやピアノが効果的に使われており、ハードな曲でありながら都会的な感じすらします。2曲目もアップテンポのハードな作品。ヴォーカルがアリス・クーパー的で全体の印象は重たいのですが、サザンテイスト溢れるサイド・ギターにリード・ギターが軽さを与えてくれていて耳に馴染みやすくなっています。3曲目は、美しいメロディを持った作品で、ブリティッシュというかアイリッシュ的な(ロリー・ギャラガー風)感じのする曲です。4曲目は、絞り出しているような声とへヴぃなギター・リフがブラック・サバスを連想させますが、途中からはクラッピングやピアノの参加で明るい印象になります。とことん暗くなりきれないところが、このバンドのいいとこなんです。が、そのせいで日本デビューが遅れたのかも。ヘヴィ・メタル調の始まり方をする5曲目は、キャッチーなメロディと鋭角なギター・リフが特徴の作品です。しかし、これまた途中にブギー調の間奏を挟むなど楽しく演出されています。 アナログではB面トップの6曲目は、プログレッシヴな広がりのある作品です。続けて始まる7曲目は、インド風のメロディが印象的な黒魔術的な暗さと重さを持った作品です。8曲目は、アメリカン・ヘヴィ・メタルの元祖と呼ばれるに相応しい作品で、バンドの演奏力の高さを十分に感じ取ることができます。おどろおどろしいヴォーカルや演奏のわりには、キャッチーなメロディのせいでノリのいい感じが強い9曲目。最後の10曲目は、カントリー・テイストの強い作品で肩透かしを食らいます。ですが、ハードな演奏やコーラスなど味のある作品であることは確かです。カントリー・ロックというのではなくロックをカントリー風にアレンジしてみましたという感じです。 非常に器用なバンドで演奏力やアレンジ力も高いのですが、当時はジャケットの印象などからするともう少しへヴィーでダークな印象を持っていたのも確かでした。しかし、アメリカ(しかもニューヨーク)のロック・バンドという見方をすれば、これほど優れたバンドもいないのではないでしょうか。シティ派ハード・ロックの歴史的名盤です。 |