ROCK STANDARD 037 CACTUS |
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています |
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ジェフ・ベックとのバンド結成の話がジェフの交通事故により頓挫してしまい、残されたヴァニラ・ファッジの二人、ティム・ボガートとカーマイン・アピスが結成したブルース系ハード・ロックのバンドのファーストです。1960年代後半、ブリティッシュ・ロックがすばらしい発展を遂げる中、停滞気味だったアメリカン・ロック。そのアメリカの仲間たちを叱咤するかのようにグランド・ファンク・レイルロードとともに反撃の狼煙を上げたグループでもあります。卓越したヴァニラ・ファッジのリズム隊の二人はもちろん、若干二十歳でありながらテッド・ニュージェント率いるアンボイ・デュークスなどで活躍していたヴォーカリストのラスティ・デイ、バディ・マイルス・バンド出身のギタリスト、ジム・マカーティ(ヤードバーズ、ルネッサンスのジム・マカーティとは同名異人)とつわものぞろいのグループです。ラスティとジムはミッチー・ライダー率いるミッドナイターズ(後のデトロイト・ホイールズ)の出身でもあります。 なにはともあれ、ジャケットに注目です。中身も名盤ですが外側も名盤です。かなりきわどい写真(連想してはいけません)ではありますが、シンプルな色使いにシンプルなロゴマーク。今でも十分通用するのではないでしょうか?インテリアとしても最高の大好きなジャケットの一枚です。このジャケットを眺めながら(もちろん聴きながら)飲むバーボンが最高です。 アルバムは、壮絶なバトルで幕を開けます。70年の作品だからと思って、のんびり構えていると腰を抜かしますよ。クリームなどと同じ展開ではありますが、ハープも吹けるヴォーカリストのラスティの存在が良いアクセントになって他のハード・ロックのグループと一線を画しています。2曲目は、昔知り合った女に対する思いを切々と歌うカントリー・タッチの美しい作品です。3曲目は、どこかタジ・マハールを思わせるジャグ・タイム・ブルースっぽい曲ですが、間奏の演奏などはハード・ロックしていて聴き応え十分です。4曲目は、アコースティックとエレクトリックを巧みに組み合わせて作られた作品で、一曲目同様すさまじいバトルも堪能できます。とくに、エレクトリックを強調した演奏ではハード・ロックの基本的なスタイルを楽しむことが出来ます。もともとはウィリー・ディクソンのブルース・ナンバーなのですが、ジムの大胆なアレンジでオリジナルといっても良いほどの出来栄えです。 5曲目は、ハードなR&R・スタイルの曲です。6曲目は、ブルースを下地にしたジャム・セッション風の曲で個々の力量が十二分に発揮されています。7曲目は、ハード・ブギ・スタイルの作品。最後の8曲目の作品は、これぞハード・ロックという作品でハードなリフを連発するギターにリズミカルとも思えるベース、小気味良いドラムにヴォーカル、どれをとっても一級品です。ジミ・ヘンドリクスっぽいギター・ソロも実験的な感じで好感が持てます。この作品だけでなく、こんなに華やかな?ベースを弾く人間はティム・ボガート以外にはいないのではないでしょうか。 今聴くと若干は古さを感じますが、演奏力の高さと一体感、ブルースをベースにしたバラエティ豊かな楽曲群、ハード・ロックの誕生に相応しい作品であり歴史的な名盤です。ブルースからハード・ロックが誕生したということがよく分かる作品ですよ。ぜひ、若い人たちに聴いてもらいたいものです。 |