ROCK STANDARD  028 JOURNEY
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています
INFINITY(1978)

01 LIGHTS
02 FEELING THAT WAY
03 ANYTIME
04 LA DO LA
05 PATIENTLY
06 WHEEL IN THE SKY
07 SOMETHIN' TO HIDE
08 WINDS OF MARCH
09 CAN DO
10 OPENED THE DOOR

GREGG ROLIE : Keyboards, Vo.
NEAL SCHON : Guitar, Vo.
ROSS VALORY : Bass, Vo.
AYNSLEY DUNBAR : Drums, Percussion
STEVE PERRY : Lead Vocals

Produced by ROY THOMAS BAKER
専任のヴォーカリストにスティーヴ・ペリーを迎えて発表された起死回生の4作目です。ハードな面とメロディアスな面を合体させて300万枚以上の売上を記録した大ヒットアルバムです。大ヒットの要因は、ハイトーンを生かしたスティーヴ・ペリーのヴォーカルとマッチしたキャッチーなメロディなのですが、そちらを表とすれば、目に見えない裏の要因は、クィーンを手掛けたことで有名なロイ・トーマス・ベイカーの参加でしょう。その影響は、ギターの音色などで特に顕著です。幾重にも重なった音が重好感を増しているという手法は、クィーンのアルバムと同様に作品に奥深さと広がりをもたせています。

キャッチーなメロディとハードな演奏は、その後のアメリカン・ハード・ロックの基本的なパターンとして様々なグループに受け継がれていきますが、ハード・ロックのバラードがチャートを賑わすようになったのもジャーニーの影響が大であると思います。その反面、ブリティッシュ・ハード・ロックなどを敬愛してやまない人たちからは、産業ロックや大きな恐竜に喩えてダイノ・ロックなどと呼ばれ、レヴェルの低いお子様向けロックであるとも揶揄されたりしました。 しかし、高度な技術に裏打ちされたアルバムは、その後のロック界に与えた影響などを考えると十分に歴史的な価値のあるアルバムだと思います。

スティーヴ・ペリーの「お披露目」ですといった感じのスロー・バラードでアルバムは幕を開けます。ポール・ロジャース(フリー、バッド・カンパニー)が歌うと完全にマッチしそうなブルース色の濃いナンバーですが、スティーヴのハイ・トーンによりポップな感じが強く出ています。2曲目と3曲目は、続くように演奏されますが、グレッグ・ローリーとスティーヴ・ペリーの二人がリード・ヴォーカルをとっています。二人の掛け合いも楽しい曲作りがなされていますが、グレッグの声は、ジョン・ウェットンに似ています。とくに3曲目は、ロイ・トーマス・ベーカーの曲作りを象徴するオーバー・ダブされたリード・ギター・ソロと分厚いコーラスが重厚に曲を盛り上げます。ハードなAOR(シカゴっぽいかも)的なバラードでグレッグ・ローリーがリード・ヴォーカルをとっています。4曲目は、スピーディーなハード・ロックです。ジャーニーが求めていたハード・ロックの完成ともいうような傑作です。A面最後は、アコースティックのギターとピアノをバックに歌われるメロディアスで美しいバラード、間奏のエレクトリックの導入が、曲の盛り上げに一役買っています。

アナログではB面トップになる6曲目は、新生ジャーニーのイメージを決定づけた大ヒット曲です。チョッピリレインボウ風のところもありますが、メロディアスでありながらハードに展開されるアメリカン・ハード・ロックの基本形です。7曲目もメロディアスでドラマティックに展開される曲でニール・ショーンが何人いるのでしょう、と考えたくなるほどのオーバー・ダブが印象的な曲です。8曲目は、スティーヴ・ペリーがしっとりと歌い上げるラヴ・ソング。後半部のブルージーで重厚な演奏には、初期ジャーニーを聴いているようで、私的には一安心といったところです。9曲目は、ブルース系のハード・ロックですが、アメリカ的な味付けがなされていてハードな中にキャッチーな親しみ易いメロディという、これもアメリカのバンドならではといった曲です。最後は、スティーヴのヴォーカルに絡むエフェクト処理されたコーラスが印象的なドラマティックな曲で締め括られます。

この作品の歴史的な価値は、それまでアメリカには無かった録音方法やミックス・ダウンによる制作が、その後のアメリカにおけるハード・ロックの路線を明確に示したという点ではないでしょうか。万人受けするロックが産業として大きく発展していた時期の作品なので、産業ロックと呼ばれても仕方がありませんが、高度な演奏技術があってこそ完成することの出来た歴史的名盤です。ストレートなロックが好きな方には、前三作がお薦めです。

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