ROCK STANDARD 023 THE WHO |
ROCK STANDARDは、70年代を中心にロックに変革をもたらした名盤・迷盤を紹介しています |
![]() 01 BABA O'RILEY 02 BARGAIN 03 LOVE AIN'T FOR KEEPING 04 MY WIFE 05 THE SONG IS OVER 06 GETTING IN TUNE 07 GOING MOBILE 08 BEHIND BLUE EYES 09 WON'T GET FOOLED AGAIN ROGER DALTREY : Vocal JOHN ENTWISTLE : Bass, Piano, Vo. KEITH MOON : Drums, Percussion JON LORD : Keyboard PETE TOWNSHEND : Guitar, VCS3 and ARP Synthesizers, Organ, Piano, Vo. |
新しい波を敏感に捉え、それを噛み砕き、実際に具体化してみせる。フーの音楽性を一言で表すとすれば、そういうことになるのではないでしょうか。60年代から生まれては消えていった数あるビート・バンドの頂点をキープしつつ、斬新なロックを展開していったフーの最高到達点が、このアルバム『WHO'S NEXT』には詰まっています。 大反響を生んだロック・オペラ『TOMMY』を越える超大作としてレコード、映画などメディアのすべてを巻き込み準備が進んだ『LIFEHOUSE』が、あまりの壮大さ(聴衆参加型ロック)のため?挫折し、急遽シングルアルバム(元々はダブル・アルバムの予定)として発表されたのがこの作品なのです。したがって、斬新なアイデア満載の作品なのです。斬新さは、アルバムジャケットにも表れています。写真は、立小便の後ファスナーを閉じているところの写真なのです。痕跡が真中のコンクリートの柱に残っています。 このアルバムがシングル・アルバムとして発表されたキッカケは、新プロデューサーのグリン・ジョンズとの出会いでした。未完成の楽曲によるライヴ・フィルムの撮影が上手くいかず、曲の完成を目指してロンドンでの作業中に『ライフハウスに固執することなく純粋にアルバムの発表をしてはどうか』というグリンの提言にバンドのメンバーが賛同し実現したそうです。アルバム完成に向かったメンバーたちが、それまでのもやもやを払拭し全力で曲の完成に向かったのはいうまでもないでしょう。このアルバムでは、それまでのフーの音とは違うソリッドな面が強調され、ベースやドラムの音ひとつひとつがクリアーに表現されています。これも、グリンのおかげではないでしょうか。 アルバムの歴史的な価値は、当時まだ十分に使いこなされていなかったシンセサイザーの斬新な導入方法にあると思います。シンセサイザーをシンフォニック、効果音的に使用するのではなく、ひとつのリズム楽器として使用しているのが目立つ事です。その使用方法が効果的に発揮されており、アルバム全体のイメージを決定的なものにしている曲が、テクノの先取りとでもいうようなイントロで始まる1曲目の「BABA O'RILEY」です。しかし、だんだんシンセの音がバンジョーのアルペジオに聴こえてきて、最後にはブルーグラス風のバイオリンも加わってカントリーロックとハード・ロックの融合へ発展。カントリーとロックの融合を試みたグラム・パーソンズも真っ青でしょう。カントリー・ロック的なアプローチは3曲目でも見られますが、カントリーに限らず当時ミュージシャンの間では話題になっていたであろうアメリカ南部のR&Bやスワンプ・ロックなどの匂いも感じられフーの感覚の鋭さが感じ取れます。7曲目などは、もろモータウン風でファンキーなハード・ロックに仕上がっています。 しかし、8曲目のように英国トラッドを基調にしたアコースティカルな美しい曲もあり、彼らの幅の広さを感じさせます。どの曲も複雑な構成をしており、完成に向けたメンバーの並々ならぬ努力が伺えます。アルバムの最後もシンセサイザーを効果的に利用した名曲で締め括られています。 当時は先のことなどわかりませんので、凄いなー、何て思っただけでしたが、あらためて聴き直すと70年代以降に出現するさまざまなロックの要素が混在しているのが聴き取れると思います。まさに、プログレッシヴな作品です。最後に一言、ロジャー・ダルトリーのヴォーカルも聴き逃せません。ロックを代表する最高のヴォーカリストとしての地位を築き上げたアルバムであることも付け加えさせてください。 |